2017年3月24日金曜日

第1586話 やって来たのは練馬区・江古田 (その2)

昼下がりの「お志ど里」はすいていた。
入れ込みの大きな座敷の一画に陣を取り、
胡坐(あぐら)をかいた。
正座は大の苦手だけれど、胡坐は大得意。
この姿勢で徹夜マージャンにも耐えられる。
自慢じゃないけどネ。

「お志どり」はもともと有楽町のガード下で開業したらしい。
それが1970年代になって江古田に移転して来たという。
ロンドンから帰国したJ.C.が
最初に就職した会社は有楽町にあり、
昼飯に晩酌にガード下の店々にお世話になったものだ。

それが1975年のことで
すでに「お志ど里」が飛び去ったあとだから
’70年代前半の引っ越しだと思われる。
有楽町から江古田、
比較的近距離の移動は渡り鳥でも留鳥でもない、
漂鳥・オシドリにふさわしい行動といえようか―。

店内に点在する先客たちは
遅い昼飯組と早い晩酌組にほぼ二分されている。
中にはコップと茶碗の二刀流が混在してもいる。
外から入る陽射しがたたみを照らし、
明るい空間にけだるい空気が流れている。
これこそが昼飲みのダイゴ味であろうヨ。

所望したのはキリンラガーの大ジョッキ。
けっこうなサイズである。
数日前に右手首を傷めたため、
片手じゃ持ち上がらず、両手でヨッコラセ。

「お好きなモノをどうぞ!」―E村サンをうながす。
しばらく考慮した相方が選んだのは
あさりバターとサバ味噌煮だ。
ふむ、チョイスとしては悪くないやネ。

J.C.も何か1品。
こんな値付けでダイジョビかいな?
不安にかられながらも平目の刺身をお願いした。
何たって530円の超安値、本物なら御の字で
間違っても上物であるわけがない。
そこは覚悟のうえなのだ。

はたして・・・
現れたのは円を形成する薄切りの、
ヒラメらしきもの。
あくまでもらしきモノ。
ってことは本物に非ずであった。

=つづく=