2017年3月29日水曜日

第1589話 やって来たのは練馬区・江古田 (その5)

江古田の「和田屋」にいる。
昭和の匂いがぷんぷんである。
これでBGMに昭和歌謡でもかけてくれたら
もうそれだけで肴は要らない。
ついでに相方も要らないくらいだ。

どんな曲がいいのかって?
そうですなァ、フランク永井や裕次郎では
ちょっとモダン過ぎちゃって合わないだろうし、
銀座を舞台にしたのもなじまないな。
かと言って練馬を歌った楽曲は浮かばないし。

やはりこの地から近い池袋がいいかも。
となれば青江美奈の「池袋の夜」なんかピッタリだろう。
美久仁小路や人生横丁も登場するし。
いつもならここで歌詞の紹介となるけれど、
今回は自重しましょう。
池袋東口で飲んだときのために取り置きしときましょう。

さて、選んだつまみは焼きとんのレバーとカキフライだ。
ともに二人の好物だからネ。
どちらもフツーの居酒屋・大衆酒場の水準を
軽くクリアして余りあった。

大粒のカキは瀬戸内ではなく三陸産だと思われる。
いまだ復興をはたせない三陸。
人々も町々ももがき苦しんでいるのに
あの海に育つカキはほぼ完全復活を遂げている。

志村けんじゃないが貝はいいよな、かきはいいヨ。
このとき頭の中を往年の名優、
いや、怪優というべきか、フランキー堺の顔がよぎった。
何だ、いきなり! ってか?
いえ、「私は貝になりたい」って映画があったでしょ。

そう言やあ、二度目の賜杯を目前にして
新横綱・稀勢の里に二番続けて破れた照ノ富士。
あの顔を見ると、いつもフランキ―を思い出す。
いやはや実によく似てるんだ。

それはそれとして万事休したと思われながら
よみがえった稀勢の里はスゴかった。
みんなあきらめてたのに本人だけはネヴァー・ギヴ・アップ。
ちゃあんと両親を呼んでたもんネ。

さて、「三州屋」、「加賀屋」ほどじゃないにせよ、
都内では「和田屋」をあちこちで見掛ける。
繁華街では新橋と四谷。
中央線沿線なんか、
高円寺・阿佐ヶ谷・西荻と、目白押しで連なっている。

すべてを訪れたわけではないが
J.C.が好きなのは浜田山と五反田。
でもネ、先述した”昭和性”をおもんぱかると
マイ・ベストはこの江古田になる。
何でもすでに閉業した麻布「和田屋」の暖簾分けだそうな。
遠くからでも一訪の価値ある佳店ですヨ。

=おしまい=

「和田屋」
 東京都練馬区栄町30-2
 03-3992-3153