2017年3月28日火曜日

第1588話 やって来たのは練馬区・江古田 (その4)

ニセ平目の肩透かしに態勢を崩しながらも
仕切り直してキリン一番搾りの大瓶に切り替えた。
食指が動かなかったサバの味噌煮は相方におっつけ、
こちらはあさりバターを合いの手に瓶ビールを飲む。
小さなコップを辞退し、先刻の大ジョッキの注ぐ。

これには一つの腹積もりがあった。
メニューには大ジョッキ(700ml)とあったが
飲み干してみて
どうもそれほどの容量があるとは思えなかったからだ。

案の定、633mlの大瓶が入りきらない。
およそ600mlといったところだ。
まっ、これは居酒屋の常、ビールメーカーも微妙に異なる、
さまざまなサイズのジョッキを店舗に提供しているのだ。

何だかケチばかり付けてるみたいで尻の座りが悪くなってきた。
多くの学生たちにも支持されていると聞き及ぶ。
ワンコインで白身の刺身を
タップリ食べられるのだから、さもありなん。
平目だろうがティラピアだろうが大した問題にゃなるまい。
それが若さというものだ。

続いて2軒目。
線路の反対側、北口の「和田屋」に向かう。
J.C.的には江古田の町で最愛の飲み処である。
何たって店内に流れる空気がいい。

子どもの頃、亡き親父に連れられて
訪れた酒場の匂いがここかしこに残っている。
浅草の「菊水」、池袋の「バクダン」、
それと田町駅前の、何といったかな?
この店の名前だけが思い出せない。

空気のみならず、
調理のオジさんからも接客のオバさんからも
昭和の匂いがにじみ出ている。
要するに昭和まみれなんですな、ここは―。

ここでは白ホッピーを所望した。
ホッピーにはほかに黒と赤があり、
通常、白・黒はどの店でも飲めるが
赤はめったにお目に掛かれない。

相方は角ハイボールである。
ホッピーは中ジョッキにいっぱいイッパイ状態で供された。
よってジョッキとジョッキをガッチンコ、
本日二度目の乾杯となる。
時間が早いせいか、まだガラガラの中、
つまみの吟味に入った。

=つづく=