2017年5月31日水曜日

第1634話 多摩川渡って新丸子 (その6)

1分足らずでえんどう豆が到着した。
塩茹でのそれはちょっと見、60粒はあるだろうか。
十中八九、中国産の冷凍品であろう。
200円の値付けでは、さもありなん。

期待せずに一粒づつ箸でつまんでは口元に運ぶ。
おやっ、あれっ、捨てたもんじゃないゾ。
それなりにビールの友となってくれる。
おかげで割り箸はプレートとマウスの間、
40cmの距離を60往復することになった。
右手の指先に「ご苦労さん!」―
ねぎらいの一声を掛けてやる。

続いてデシャップ台にしょっちゅう現れる餃子を注文。
中華料理屋に来たら何か中華モノをいっとかなきゃネ。
餃子は1皿5カン付けで280円。
コンパクトにして廉価、
取りあえずの一品として人気があるわけだヨ。

冷たい清酒をと思ったものの、
明るいうちからの深酒は慎もう。
特に今宵は早目に帰宅して
夜の決戦に備えなければならない。
いや、戦うのは自分じゃなくてプロボクサーだけど―。

最後のビールをお願いし、最後のつまみの吟味に入る。
神奈川名物・サンマーメンで締める手はあるが
ドンブリ一鉢はちょいと重たい。
レバーの生姜焼き、穴子の天ぷら、どちらも好物だ。
しかし、はるばる遠征したんじゃないか、
当店ならではのユニークな一品を選ばなきゃ。

実は入店時から気になっていたポスターがあった。
頭上に貼り出されたそれは、まぐろメンチ串カツ。
写真もちゃあんと載っている。
ふ~む、まぐろのメンチカツねェ。

あまり食指は動かぬものの、頭が指を説得した。
いや、指が頭を忖度したのかもしれない。
げに珍しい獣医学部、もとい、まぐろメンチなのだから
ここは赤信号を青に変えても行かねばならぬ。
行かねばならんのだァ~!
とまあ、そうなったわけでありまして―。

可愛い串が3本並んで繊切りキャベツ、
レモンスライス、練り辛子を従えて登場した。
既視感があるのは3ヶ月前に蒲田の「鳥万本店」で
同じく3本の串、アメリカンドッグを食べたからだ。

熱々の1本にレモンを搾り、フ~フ~吹いてパクリ。
ほくほくの歯ざわりが快い。
あっさりとした口当たりにまぐろの風味もふんわり。
うん、うん、これは当たり!だネ。
得心してのお勘定は2千と7百円ほどでした。

=おしまい=

「三ちゃん食堂」
 神奈川県川崎市中原区新丸子町733
 044-722-2863