2019年3月5日火曜日

第2081話 金八先生のお休み処 (その2)

都の西北ならぬ、東北の玄関口、足立区・北千住で
前フリに丸々1話費やしてしまった理髪のあと、
連絡通路を抜け、西口から東口へ移動した。
2012年だったか、千代田区・神田から
東京電機大のキャンパスが
JTの社宅跡地に移転してきて以来、街の様相は一変した。
今では中高年と若者が上手いこと溶け合う、
都内でも稀有な街として”住みたい人気度”が急上昇中、
いや、ご同慶の至りである。

電気大の立派な校舎は建っても
東口は西口に比べ、どこかのどか。
道を行き交う人の姿が少ない。
それでもパチンコ&スロットもあれば、立ち飲み酒場もある。

10分ほど歩き、東武伊勢崎線・牛田駅と
京成本線・京成関屋駅が対面する間を抜けて柳原地区へ。
本日のターゲットは「日の出屋」である。
昔ながらの中華そば屋ながら、町中華という感じではない。
店先で菓子・煎餅を商ったりしてるし・・・。

J.C.はただの1度も観たことがないが
国民的学園ドラマの「三年B組金八先生」はこの界隈で撮影され、
「日の出屋」はスタッフの憩いの場として重宝されたという。
楽屋と休憩所の役割を担ったわけだ。

夜の開店時間、17時を回って到着すると、
店頭にはまだ「準備中」の貼り紙。
おや? おかしいな。
ガラス越しに中をうかがってみたら
厨房ではオジさんが立ち働いている様子。
どうやら臨時休業ではないらしく、最悪の事態は免れた。

店先にボ~ッと立ちすくむのもはばかられ、
そのまま通過して数軒隣りの露店青果商の脇へ。
高さ1.7メートルしかない、ちっぽけなガード下である。
上を走るのは東武伊勢崎線だ。

その場所から電話を入れる。
受話器を取ったのはおそらく先刻のオジさん。
17時に営業開始したという。
安堵して舞い戻った。

「準備中」の紙はそのままなれど、構わず引き戸を引く。
オジさんが笑顔で迎えてくれ、
お冷やのコップを運んでくれた。
店内は4人掛けテーブルが4卓、ゆったりと配置されている。
先客はもちろんいない。

卓上には胡椒の缶があるのみ、それもブラックペッパーだ。
支那そば・中華そば・ラーメンには
ホワイトのほうがいいんだけどねェ。
豚のゲンコツの匂いと脂分でギトギト、
あるいは異臭まき散らす魚粉まみれ、
およそ良識ある人間が口にするにふさわしからぬ、
惰麺はまたベツのハナシだけどネ。

=つづく=