2019年3月11日月曜日

第2085話 立ち飲み酒場のいわし刺し (その1)

さんとも・O戸サンと舞い戻った西葛西の町。
昼下がりのカラオケをしばし楽しんだあと、
路線バスで新小岩を目指した。
始発の西葛西から終着の新小岩までは
船堀街道、平和橋通りを経て、ほぼ一本道である。

明るければ窓外の景色を眺めることもできるが
すでに陽は落ちてほとんど真っ暗。
揺られること長きに渡り、所用時間は45分。
降り際、運転手さんに
もしも歩いたらどのくらい掛かるのか訊ねると、
「歩いたことないですけど、2時間くらいでしょうかネ」—
いや、歩かなくてよかった。

葛飾区・新小岩と江戸川区・小岩は
呑ン兵衛垂涎の酒場に事欠かない。
当夜の予定は小一時間を立ち飲みに費やしてから
以前、何度か利用したことのある、
庶民的な洋食屋に流れるというもの。
さっそく目星をつけていた「しげきん」に向かう。
ちょうど2年前、ぶらり立ち寄ったものの、
店内は客でごった返しており、泣く泣くあきらめた店である。

今回は懸念が払拭されて
カウンターにも小テーブルにもスペースがあった。
当然、カウンターに陣を取る。
独り飲みの女性の隣りにO戸サンが滑り込んだ。
彼女がつまんでいるいわしの刺身が光り輝いている。

スーパードライの中ジョッキにそのいわし刺し、
そして小肌酢をお願いした。
調理するのは若い女性で
手際よくいわしと小肌を切り揃える。
店主夫妻の娘さんらしい。

何度も書いてるように、J.C.はどれほど新鮮であっても
いわし・あじ・さんまなど青背の光りモノを
そのまま生で食することは非常にまれ。
必ず酢と塩で〆てから、いただくようにしている。

たまたまこの夜は気分が乗ったせいか
一箸つけると意想外の美味しさ。
きざみ葱とおろし生姜の薬味もピタリと決まって
文句のつけようがないくらい。
しかも「しげきん」のつまみ類は340円均一なのだ。

アルコールだって中ジョッキが340円、酎ハイは240円。
新小岩駅から至近の繁華街という立地、
家賃だって安くなかろうし、よく商売が成り立つものだ。
いやあ、感心することしきりである。

=つづく=