2019年3月18日月曜日

第2090話 なにも言うまい 青砥の一夜 (その4)

京成線・青戸駅前の「こまどり」で
ホイスのボールを飲んでいる。
琥珀色のベースに、冷えたニッポンサイダーの炭酸。
氷はナシでサーヴされた。
口当たり柔らかく、ほんのりと甘みがあって好きだ。

ホイスを味わうのは生涯5度目くらいかな?
ヒョンなところで、ヒョンな酒に出くわしたものだ。
また何処かでお目にかかったら
少なくとも1杯はお願いしよう。
ちなみにホイス自体はノンアルコールである。

ねぎまを2本やっつけたし、何かもう1品まいろうか。
焼きとんはこのあと「もつ焼き 小江戸」が控えているから
そちらでいただくとして、壁の品書きを目で追う。
刺身は金目鯛(690円)に北寄貝(580円)。
ほかに鳥の唐揚げ、手羽餃子、野菜炒め(各580円)など。
ここは金目か北寄だろうヨ。

二者択一に絞ったとき、大挙して客が来店。
カウンター奥の予約に加え、
テーブルのグループにも遅れて来た参加者と
一気に立て込んで騒がしくなった。
ここが潮目だな・・・。
何も言うまい、嘆くまい、気を利かせてお勘定。
恐縮した”雌のこまどり”が店の外まで見送ってくれた。

2軒目の「小江戸」は「こまどり」から30秒。
いや、もっと近いかも—。
こちらはビルの2階にある。
1階の創作和食店はガラス張りで中が丸見え。
席は8割方埋まっていた。

少しばかり急な階段を上り、自動ドアを抜けると、
丸椅子に1カップルが順番待ち。
入口で視線が合った接客中の女性(たぶん女将)に
「いっぱいだよネ?」
「ちょっとお待ちになって—」
短いやりとりのあと、彼らの隣りに腰を下ろす。

1分と経たぬうちに
「お一人様、どうぞぉ!」—
あれれ、こちらが先に案内されちゃった。
気がとがめてカップルに会釈すると、
二つの笑顔が返って来た。
青砥の住人はいい人たちなんだなァ。

着いた席はカウンターの左端。
ちょうどスタッフの動線にあたり、
彼らの動きが目まぐるしいぶん、注文は通しやすい。
ファミレスみたいに何枚もあるメニューから
まずは飲みものの品定めに入った。

=つづく= 

「こまどり」
 東京都葛飾区青戸3-39-9
 03-3604-9195