2019年3月19日火曜日

第2091話 なにも言うまい 青砥の一夜 (その5)

京成線・青戸駅前の「もつ焼き 小江戸」。
隣り駅の立石にある人気酒場、
「江戸っ子」の流れを汲む店だ。
立石のポンパドール夫人の異名を取る、
あの有名な女将さんが取り仕切る「江戸っ子」。
「小江戸」の店名もそこに由来している。

当店のスペシャルドリンク、
小江戸ハイボール(360円)を所望すると、
氷のアル・ナシを問われた。
ここは氷ナシで—。

つまみは焼きとんで始めるが売切れが続出。
カシラもタンもレバーもすでにない。
屋号に”もつ焼き”を冠するわりに
仕込みの串数が不十分なんじゃないの。
仕方なくシロをタレでお願い。
ここも「こまどり」同様、串は2本しばりだ。
シロは下茹でを施してからカリッと焼き上げるタイプ。
炭火ではあるまいが、そこそこ水準に達している。

ビールの取り揃えが半端ではない。
リストにブルックリン・ラガーを見つけた。
ニューヨーク在住時代に何度か飲んだ銘柄だ。
ラガーを謳っていてもかなり重めでちっともラガーじゃない。
よって好きな銘柄ではない。

それでも懐かしさに背中を押され、
発注してみたたものの、在庫切れ。
おそらく注文が少ないので仕入れを取りやめたのだろう。
地元の客がブルックリン・ラガーを飲むとも思えないし・・・。
代わりにキリン一番搾りの黒生小瓶を―。

壁に”小長井産生がき”の短冊を見つけた。
長崎県・小長井は有明海に面して
諫早の東北東15kmに位置している。
対岸は島原半島の国見。
高校サッカーで全国に名を知らしめたあの国見だ。

ふ~ん、小長井のかきねェ・・・いただいてみようか。
すると、淡白な中に繊細な滋味が感じられ、とても美味しい。
思い出すのははるか昔、
ニューヨークの「オイスター・バー」で食べたクマモトである。
小粒ながら、
フランスのブロン、アメリカのブルーポイントよりよかった。

クマモトは小さいわりに貝殻が深い。
小長井は一回り大きいものの、やはり貝殻に深みがある。
同じ海で生まれたものだからルーツが一緒なのだろう。
レモンを搾ってツルリと舌の上を滑らせた。
これが2個付けで500円。

その間にも、つまみ類はどんどん売切れてゆく。
訊けば、閉店が20時半だというじゃないか。
ずいぶん早いと思ったが
土曜日は15時~20時半の営業とのこと。
こりゃ、近いうちにウラを返さにゃならんわな。

=おしまい=

「もつ焼き 小江戸」
 東京都葛飾区青戸3-39-3 優和ビル2F
 03-3690-0898