2019年3月6日水曜日

第2082話 金八先生のお休み処 (その3)

3年B組のスタッフの面々が憩った「日の出屋」。
注文するのはシンプルな中華そばとハナから決めていた。
暖簾には大きく”中華そば”と染め抜かれているし、
袖看板にも”中華そば・御菓子”の文字が見える。
しかしながら店内の品書きはラーメン。
よってオジさんにはラーメンと伝えた。

ガラスの窓越しに見えた中庭(?)には信楽焼きのお狸様。
それも日本そば屋の店頭に置かれる立派なのではなくて
ずっとコンパクトで可愛いタヌ公である。
オバアちゃんが現れ、お供えだか、お手入れだか、
お狸様の面倒を見出した。
その足でガラス戸を引き、店内に入って来てJ.C.に
「いらっしゃいませ!」―
いえ、感嘆符を付けるほど大きな声じゃなかったがネ。

到着したラーメン(550円)には
肩ロースのチャーシューが3枚。
歯応えがあるタイプで、これは好み。
だけどラーメンで3枚付けとなると、
チャーシューメン(850円)ならどんだけ入れるつもりなの?

シナチクは懐かしい味付けだ。
円くスライスしたナルトと小さな焼き海苔、
そして1本を2つに裁断したインゲンは
揃って存在感が薄く、味のアクセントというより、
むしろ見た目のアクセサリーだネ。

中細ややちぢれの麺は粉々感があってわりと好き。
スープは思いのほか昔懐かし風ではなかった。
醤油の色浅く、化調は感じさせてもクドさはない。
総じて満足のいく1杯であった。

先ほどオバアちゃんが入って来たお狸様のほうから
常連というより昵懇といった感じのオッサンが現れた。
茶の間の脇のテーブルに着くとすぐに
オバアちゃんが透明のドリンクを用意する。
マイボトルといった感じで日本酒だろうか?
いや、たぶん焼酎の類いだネ、あれは—。

するとオッサン、持ち込んだ包みをおもむろに開く。
ここでオバアちゃん、
「わさびがいいんなら、出したげるヨ」
何だ、何だ! まぐろのブツでも買って来たんか?

支払い時にそっと盗み見すると、ボイルされたホタルイカ。
アハハ、さっき牛田駅前の魚屋で見掛けた、
1パック380円のホタルイカに違いない。
品定めする近所の若夫婦の肩越しにのぞいたんだ。
帰り際、再び鮮魚店の前を通ると、
3パックあったホタルイカが2パックに減っていた。
ハハハ、ウラは取れたネ。

=おしまい=

「日の出屋」
 東京都足立区柳原1-33-2
 03-3888-1664