2019年3月12日火曜日

第2086話 立ち飲み酒場のいわし刺し (その2)

JR総武線・新小岩駅の南口にある立ち飲み「しげきん」。
いわし刺しに舌鼓をポンと打ったところ。
コイツを浅く酢で〆て、おろし立ての本わさびでやったら
もう、たまらんだろうぜ。
一瞬、見苦しく悶えるおのれの姿がまぶたに浮かんで消えた。
いや、自分で消した。

小肌酢もかなりイケるゾ。
そうは言っても、いわしには及ばず。
中ジョッキをお替わりして、さらに品書きをチェックする。
うむ、うむ、惹かれるものが少なくないな。
昼めしをそばにしておいてよかった。

小用を足して戻ってくると、
早くも相方が先客の女性と親し気に言葉を交わしている。
予想はしていたものの、あらためてその早業に驚く。
二人の会話を尻目にこちらは勝手に追加注文。
平目の薄造りと馬刺しを。
ついでに酎ハイに切り替えた。
酎ハイは悪くなかったが、つまみは2品ともハズレ。

平目は弾力がなく、クタッとしている。
イヤな匂いはなくとも死後、相当の時間が経っている。
もともと340円の平目に期待を寄せるほうがあつかましいか。
馬刺しもまたしかりで馬肉の風味はどこかへ飛んでしまい、
質のよくないまぐろ赤身のよう。
当店は青背のサカナに限るネ。

一箸付けて2皿とも話に夢中の女郎衆にオッツケた。
われながらなかなかのワルよのぉ。
ここで遅ればせながら会話に参加する。
女郎衆すでに打ち解けており、
話題はかなりきわどい個人情報にまで及んでいる。

先客はいつもカウンターで女独り飲み。
ある日、酔っ払いが彼女のお尻を触ったんだと―。
そのときたまたまカウンターに居合わせた、
ゴリラみたいな男性客がプロテクトしてくれたんだと―。
そして、その彼が今のダンナなんだと―。
いやはや人の世の出会いは様々だねェ。
考えてみりゃ、その助平オヤジはキューピッドじゃないか。

意気投合した女郎衆は連絡先の交換を済ませ、
相方はゴリラに会いたいなどとほざいている。
深入りを怖れたJ.C.、本日唯一のスペシャルメニュー、
上さば煮付け(これのみ450円)を通す。
味噌煮かと思いきや、たまり醤油煮とのことだが
あまりピンとこなかった。
やっぱりこの店はいわしと小肌でありますな。

「しげきん」
 東京都葛飾区新小岩1-30-8
 03-5662-8536