2021年9月6日月曜日

第2735話 田園調布の あゆ姿ずし

その翌日、出没したのは田園調布。

此処は大正年間に渋沢栄一らが造成した町だ。

この日はふた月に一度の理髪日。

その前に東急目黒線をオーバーランして来た。

 

行く先は大阪鮓「醍醐」、この町の一つの顔である。

駅舎の中にも持ち帰りの店舗を備え、

改札の内から外から買うことができる。

 

ここで畑中葉子の「後から前から」が

脳裏をよぎったものの、やっぱりやめとく。

べつに大阪の小姑がコワいわけじゃなく、

あまりにお下品で当ブログには似合わないからネ。

 

敷居をまたぐと先客はナシ。

つけ台に着こうとしたら

親方らしき翁にテーブルを促された。

江戸前なら断固拒否するところ、大阪だからまあいいや。

 

品書きを開く。

主力は関西鮓ながら江戸前鮨も扱う。

きちんと“すし”の字を書き分け、

箸袋には「御寿司 田園調布 醍醐」とあった。

 

ただし、大阪鮓を関西鮓と表記するのは当店だけ。

ヨソで見たことは一度もない。

イチャモンはつけたくないけど上方鮓がよりスマート。

 

本日の狙いは鮎の姿ずし、この季節ならではだ。

1尾ではもの足りないが2尾食べるものでもないから

箱ずしを3~4つ見繕ってもらった。

暑い日に熱いお茶を飲みながら待つ。

コレは粉茶ですな。

 

10分少々で運ばれ、さっそく尻っ尾から。

尾を食いちぎるのはイヤだが

身肉も付いてるので仕方ない。

下半身から攻めて最後の頭はそっくり外し、

酢めしだけを漬けしょうがとともに―。

 

鮎の姿ずしはハッキリ言って美味しいものではない。

皮目は硬いし、雀(小鯛)や鯖のほうがいい。

では、なぜ注文するのか?

季節を愛でるためであり、目を楽しませるためである。

あしらわれた一茎の蓼(たで)の緑が美しくうれしい。

葉を噛んだらピリッとした辛味が舌先を襲った。

 

押しずしは目鯛、海老、玉子、穴子などなど。

しかし、鮨にせよ、鮓にせよ、寿司にせよ、

ビール抜きで食べるのは数十年ぶりだ。

 

こらえ切れずにノンアルを所望したらキリン零ichi

この夏、初めて飲んだノンアル・ビールは

サントリー、アサヒ、キリンを制覇したことになる。

背に腹は代えられず、水にビールも代えられない。

それにしても二日連続ノンアルとは―。

哀しむべし。

 

「御鮓所 醍醐」

 東京都大田区田園調布3-1-4

 03-3721-3490