2021年9月10日金曜日

第2739話 深川の 老舗酒場の 昼ごはん

この日、現れたのは江東区・清澄白河。

東京下町のど真ん中である。

清澄通りを北上し、

小名木川を高橋(たかばし)で渡った。

 

かつて、橋のたもとに東京一の、いえ、日本一の、

いえ、いえ、世界一のどぜう屋「伊せ喜」が在った。

今はその場所にマンションがこれ見よがし。

醜悪ではないが風情なき姿をさらしている。

(住人の方々ごめんなさい、言葉のはずみです)

いずれにしろ、趣のある木造平屋建ては跡形もない。

 

胸に痛みを覚えながら森下の交差点方面へ。

歩いているとエエ~ッ、どうしたことだヨ!

「魚三酒場」が恥ずかしげもなく暖簾を出している。

何かの間違いじゃないのか?

 

いや、ちゃんと営業していた。

「魚三」の旗艦店は同じ江東区の門前仲町。

他にもう一店、新小岩にある。

現状「魚三」はみな自粛してるのに、また何だって?

真相を探るため、と同時に

あわよくば一杯引っ掛けるため、暖簾をくぐった。

 

おう、おう、けっこうな繁盛ぶりだぜい。

ところが誰も飲んでいない。

昼飲みならぬ、昼のみ定食を提供してた。

さすがに酒類の販売を控え、

営業は11時半から14時までと短い。

実際、1349分に暖簾は仕舞われた。

 

「魚三」でメシを食べたことは一度もないが

乗りかかった舟である。

品書きがないからオバちゃんに訊ねた。

850円均一の定食は

刺身・焼き魚・フライ・天ぷら・うなぎの5種。

 

細長いコの字カウンターが二つあり、

あちこちに先客の残した下げ物がそのまんま。

オバちゃん独りの接客では手が回らないのだ。

 

J.C.はこれ幸いと、その跡をチェックしたら

12膳くらいの残骸はほとんどが刺身。

850円のうなぎ定食って、どんなんかな?

興味を抱いたが軌道修正、刺身定食を通した。

 

最初に豆腐半丁の冷奴、煮しまったアラ煮、

ほぼ出来合いの漬物類が並べられた。

続いて刺身盛合せ、わかめと豆腐の味噌汁、ごはん。

 

刺身の陣容は

まぐろ赤身2、中トロ2、ぶり1、鯛系の白身2、

たこ3切れ、ほたて半粒、甘海老4尾。

以上がてんこ盛りである。

 

特別な仕入れルートがあると聞き及んでいるが

あらためて瞠目した。

でもオッサンには量的にキツく完食かなわず。

食欲旺盛な若者がたまには刺身をガッツリ食いたい、

そう思ったらオススメ、期待を裏切ることはない。

 

「魚三酒場 常盤店」

 東京都江東区常盤3-10-7

 03-3631-3717