2023年8月8日火曜日

第3335話 八十路の店主が 焼く焼き鳥 (その2)

前話のコラムに関して何人もの読者より、
問い合わせがあった。

 ♪ 昔恋しい下町の 夢が花咲く錦糸町 ♪

いったいあれは誰の何の曲ですか?
これは失礼いたしました。
藤圭子の「はしご酒」であります。
1975年リリースのこの曲は
彼女のマイベスト、たまらなく好きです。

それはそれとして「ひよっこ」。
昼めしが遅かったので空腹感なく食欲もない。
ぼんぼち(ぼんじり)を塩、
レバーをタレで1本づつ焼いてもらう。

犬連れオジサンが出て行った。
犬をほどいて去って行った。
どうやら家は近所らしい。
つれづれなるままに残ったカミさんと
会話が始まった。

てっきり店の常連かと思ったが
訪問は今回が二度目とのこと。
どうしてこんなに仲良くなれんの?
当然の疑問である。

なんでもオヤジさんの気質と
自家製のぬか漬けに惚れ込んだんだとー。
訊けば、店主は御年81歳と来たもんだ。

それにしても訪問二回目ににして
勝手に冷蔵庫を開け、
ビールの栓をスポンと抜いて
「お疲れさまァ」は並の女のできる業ではない。

彼女の名前はEり香と言う。
彼女によると店主はずいぶん前に
女将さんを亡くされ、
バイトの女の子もコロナ禍の状況を
見るに見かねて自ら去っていったという。
泣かせるねェ。
以来、ずっと独りなんだとー。

「あの二人(一人と一匹)きっと帰って来るわ。
 家の鍵持ってないもの」
案の定、帰って来た。
そしてすぐまた出ていった。

カミさんは残って隣りに座り、
小一時間も相手をしてもらった。
何でも豆芝と呼べるのは体重5kgまでで
それ以上は単なる柴犬となり、
これをデカ芝とは呼ばないそうだ。

此処でまた出逢ったときには
よろしくネと握手を交わして
「ひよっこ」をあとにした錦糸町の夜でした。

「ひよっこ」
  東京都墨田区錦糸3-17-4
 03-3623-7080