2023年8月15日火曜日

第3340話 米っきり 米っきり もう・・・(その2)

初めて入る間口の狭い「艶」。
意外にも中は広かった。
4席あるカウンターに着く。
ビールは一番搾りの中瓶。

冷・温そろうそば切りと米切り。
店のイチ推しは冷たい麺に
温かいつけ汁の肉つけ。
ほかには温玉やとろろ、
全部入りなんてのもある。
あとはカレーつけ。

よしっ、おもむろに肉つけを米切りで通した。
すると、お運びの女のコ。
「すみません、今日は米切りが終わっちゃいまして」
ガッビーン! いきなり横っ面を張り倒された。
こちとら米切り目当てで来たんだぜ。

お嬢ちゃん、俺らを
J.C.オカザワと知っての狼藉かい?
あまりの展開に呆然と立ちすくむ。
いや、座りすくんだ。

無いモノをねだっても仕方がない。
「じゃ、そばでいいや」ー
哀れJ.C.、蚊の鳴くような声で通したのでした、

「肉つけでよろしかったですネ?」
だからぁ、そう言っただろろうがっ!
つべこべ言わずに早く持って来い!
完全にブチ切れの巻である。

ほうら、裕次郎が
「風速四十米」を唸り出したぜ。

♪ ぶっち切れてく ち切れてく
  それが定めだよ    ♪

なんてウッソ~。
紳士がそんな暴言を発するワケがない。
ましてや年端もいかない若い娘に。

10分で肉つけそばが調った。
これはいわゆる他店の肉せいろである。
つけ汁には豚バラ肉と
南蛮切りの長ねぎがたっぷり.
一口すすって思わずにっこり。
ほうら三浦洸一も歌い出す。

♪ 素肌に燃える長襦袢
  縞の羽織を南郷に
  着せかけられて帰りしな
  にっこり被る豆しぼり 
  鎌倉無宿 島育ち
  オットどっこい 
  女にしたい菊之助 ♪
  (作詞:佐伯孝夫)

吉田正を加えた、
ゴールデン・トリオによる「弁天小僧」は
1955年リリースの名曲であります。

=つづく=