2023年8月21日月曜日

第3344話 2本のエビの存在感 (その1)

日医大病院をあとにして遅い昼めし。
朝から口にしたのはペットボトルの生茶1本のみ。
いくら少食のJ.C.でも
さすがにフィール・ハングリー。
病院前の坂を上った。

和菓子の「一炉庵」が見えてきた。
漱石ゆかりの老舗である。
「吾輩は猫である」のモデルは
此処の猫と言うのが通説だったが
調べてみたらそうではなかった。

漱石邸と「一炉庵」の間に
かつて酒屋があり、其処の飼い猫が真相。
「一炉庵」の店主が言うんだから間違いない。

菓子舗のはす向かいに
「夢境庵」なる日本そば屋があった。
根津神社の近くにつき、
家康にちなみ、権現そばをウリとしたが
数年前に閉業、今はべつの店になっている。

「つつじ屋」という食事&甘味処だ。
これもまた根津神社のつつじ祭りが由来だ。
生姜焼き定食でも食べようかな・・・
いや、思いとどまった。
さっき上った坂を下りてゆく。

そうだ、病院と不忍通りの間の路地に
ひなびたそば屋があるハズ。
利用したことはないが、其処にしよう。
「小松庵」は都内各地で見掛けるが
当店はどこかの暖簾分けで
採算も独立していよう。

扉を開くと落ち着いたたたずまい。
手前左手にカウンター、奥にテーブル席、
そのまた奥に小さな庭が見えた。
庭を背にして四人掛けに着く。
客は1人もいない。

黒ラベルの中瓶を飲みつつ、品書きの吟味。
量が多くて普段はあまり頼まないセットにしよう。
ともに1100円のミニ天丼そば付きと
ミニかき揚げ丼そば付きで迷った末。
かき揚げをチョイスした。

お通しのきざみたくあんをポリポリやりながら
今日を振り返る。
近代的な病院って意外にいいもんだな。
待っていても苦にならないし、
スタッフもみな親切にして丁寧。

そうだ、あそこを
マイ・ブレイクルームにしてやろう、
おっと、そりゃアカンわ。
まさか、病院でビールは飲めんやろ。

=つづく=