2012年1月2日月曜日

第220話 アニサキス みいつけた!

以前より自炊率が上がったので食品の買出しも増えた。
数ある食品売り場の中でも楽しいのは鮮魚売り場である。
次が青果で、精肉はどちらかといえばつまらない。

日本の肉屋は牛肉が主役を張っており、
すき焼き用なんぞピンからキリまで相当の種類が並ぶ。
せめて1種でいいから仔牛を置いておくれでないかい?

あとは豚肉と鶏肉と、せいぜい合鴨どまりだ。
仔羊でさえ手に入れるのに難渋するくらいで
たまにデパ地下や高級スーパーで見掛ける程度。
猪・鹿・鳩までは望まないが
兎・鶉(うずら)くらいは揃えてほしい。

肉の味を覚えて、たかだか150年足らずではさもありなん。
まだまだ食の大国・日本も
こと肉食文化に関しては後進国もいいところだ。
神戸牛だの、薩摩黒豚だの、ブランド追求もたいがいにせいよ。

建替えを待つ数寄屋橋の東芝ビルに
阪急デパートが入っていた30年ほど以前。
精肉売り場に真鴨や鶫(つぐみ)が入荷していることがあった。
鶫は確かスペイン産だった。
デパ地下でジビエを見たのはあれが最初で最後だ。

一度、大晦日に真鴨を購入して
今は亡き両親と弟と家族4人、
すき焼きにしたが肉の臭みが総身に回ってしまい、
とても食べられたものではなかったけどネ。

サカナを買いに行くのは当ブログでも
たびたび紹介した御徒町の「吉池」。
品揃えの豊富さにかけては
築地の場内を除けば都内随一だ。
サカナに限らず、ここでは鯨肉と馬肉も揃う。
加えて近所に「松坂屋上野店」があるから
まさに鬼に金棒、耳に綿棒、航平に鉄棒、
永田町にでくの棒、てなもんや三度笠。

年末に「松坂屋」で珍しい鰈(かれい)に遭遇した。
その名もサメガレイは、鮫鰈と書くのであろう。
サイズのわりにエンガワ部分がかなり多い。
パックを手にとってよくよく見ると、
1匹の回虫がクネクネとダンスを踊っているではないか。
おう、おう、これは紛れもなくアニサキスだ。
ここで会ったが百年目、迷わずアニサキス入りを買い求めた。

帰宅後、パックを開いてみるとアニサの野郎は
サメガレイの身肉を食い破り、頭と尻だけ出してやがる。

右下に出ている糸状のヤツが見えますか?

ソイツを引きずり出してみた

カメラに収めたあとは小皿にとって”塩ぶっかけの刑”である。
ずっと昔、真鱈に寄生しているのを同じ刑に処したら
奴サン、ナメクジみたいにゃ溶けずに
身体をよじり、のた打ち回っていたっけ。
残酷なようだが胃にでも進入されたひにゃ大事にいたる。
今まで痛い目に会ってきた同胞の仇討ちだと思えばいい。

さて、肝心のサメガレイの味だ。
見た目からして水っぽいかな?
そんな懸念も吹き飛び、刺身にしてよし、煮付けにして更によし。
鮫皮のように固い皮が名前の由来で
皮をむかなきゃ食えないからムキガレイの異名を合わせ持つ。
いや、実にけっこうなお味でござんした。

エッ? アニサキスはどうした! ってか?
塩じゃくたばらないからマッチの火で
”火あぶりの刑”にしてやりました。
鬼に金棒、アニサキスにマッチ棒ってネ。

「松坂屋 上野店」
 東京都台東区上野3-29-5
 03-3832-1111