2012年1月5日木曜日

第223話 めったに入らぬ甘味処

甘いものが嫌いというわけではないが
めったに口にすることはない。
フレンチやイタリアンに行ってもほとんどの場合、
デセールとドルチェはパスしている。

ハナから組み込まれているコース料理でも
パスの姿勢は変わらないから実にもったいないハナシだ。
でも大抵は相方が2人前食べるからいいのだけれど・・・。
気の利いた店だとデザート代わりにチーズを出してくれ、
これはまことにありがたい。
世の店主さんよ、この厚意を見習ってくれ給へ。

今日(だったかな?)発売の月刊誌「CIRCUS」2月号。
このミッションで菓子に携わることになった。
編集者・O野サンのご依頼は
「文豪の愛したお菓子」を何品か紹介してほしいとのこと。
漱石・清張・池波など、5人・5品を取り上げた。
ご興味がおありの方はお近くの書店へどうぞ。
68~69頁の見開きです。

永井荷風の稿では浅草「梅園」の粟ぜんざいを紹介した。
久しく味わっていなかった粟ぜんざい。
最後に食べたのは10年以上前の神田「竹むら」だった。
戦災を免れた旧神田連雀町に
鮟鱇鍋「いせ源」、鳥鍋「ぼたん」とともに
今も営業を続ける老舗である。

「梅園」で少々味気ないのは前売り食券システム。
明るいうちは参拝客でごった返す場所柄では
これも致し方ないのだろう。

でもって、久しぶりに粟ぜんざいを食べた。
実際は粟ではなく餅きびを使用しているため、
つき立ての餅のようにノビること、ノビること。
餅好き、餡子好きにはこたえられんだろうな。

脇に添えられた紫蘇の実漬が心憎い。
このせいでビールが飲みたくなり、
ダメ元で食券売場に戻ると、案の定、
そこのオバちゃんに「お前はアホか!」ってな顔をされましたとサ。
タハッ!

ハナシは変わって今年の初詣。
マイ・メイン神様は向島の白鬚神社だ。
琵琶湖湖畔の白鬚神社を総本宮とし、こちらはその御分霊。
御分霊といっても侮るなかれ、千年以上の歴史を誇っている。

参詣を済ませたあと、
必ず立ち寄るのが墨東通りの「志゛満ん草餅」。
寅さんにゃ悪いが、葛飾・柴又の草だんごの上をゆく。
よって甘味とは基本的に無縁のJ.C.にとって
唯一の例外がここなのだ。

あん入りとあんナシが3個ずつ詰合わさった箱を買い求めた。
6個で金810円也はお値打ちである。
入りはそのまま、ナシは白蜜を掛けてきな粉をまぶす。
どちらも旨いが好みはナシのほう。

創業は明治2年にさかのぼる。
大川の渡しを利用する客相手に商いを始めたという。
振り返れば長き人生、
よもぎの新芽香るこの志゛満ん草餅を超える草餅に
いまだかつて出会ったことはない。

「梅園」
 東京都台東区浅草1-31-11
 03-3841-7580

「志゛満ん草餅」
 東京都墨田区堤通1-5-9
 03-3611-6831