2012年1月11日水曜日

第227話 さゆりは大きくなりました

♪    夜明け間近 北の海は 波も荒く
   心細い 旅の女 泣かせるよう
   ほつれ髪を 指に巻いて 溜息つき
   通り過ぎる 景色ばかり 見つめていた
   十九なかばの 恋知らず
   十九なかばで 恋を知り
   

        あなた あなたたずねて 行く先は
   夏から秋への 能登半島     ♪
            (作詞:阿久悠)


今日はだしぬけに演歌。
1977年にリリースされた石川さゆりの「能登半島」です。

去年の暮れにNHKのBSプレミアムで
「ショータイム」という番組を初めて観た。
4人の進行役が毎週土曜日、
持ち回りで内外のアーティストを紹介するものだ。
およそ月にいっぺん、進行役に順番が回る計算になる。
その日は武田鉄也が石川さゆりをクローズアップ。
半年前にに放映された番組の再放送だった。

石川さゆりは1958年、熊本県生まれ。
熊本は女性歌手を豊富に産出しており、
水前寺清子・八代亜紀・原田悠里など大物揃い。
その中でもさゆりが第一人者であることは論を俟たない。

だが、そんな彼女もデビュー当時は不遇をかこっていた。
当時は花の中三トリオが
飛ぶ鳥を何羽も撃ち落としていたのだから仕方がない。
デビュー曲の「かくれんぼ」なんか、
森昌子の「せんせい」と比べたら
ずいぶん見劣り、いや、聴き劣りするものなァ。

でも、トリオがそれぞれユニークな結婚生活に入り、
引退や活動の制限をしているあいだ、
カメがウサギたちに追いつき、追い越した。
阿久悠・三木たかしのゴールデンコンビをもってしても
すぐにヒットは生まれなかったが彼らの3作目、
「津軽海峡・冬景色」で大ブレイク、辛苦が報われた。
自身も結婚・出産・離婚を経て今は独身。
事業のトラブルなんぞも経験したが見事に乗り越えている。

彼女のナンバー中、マイ・ベストスリーは

① 能登半島
② 風の盆 恋歌
③ 暖流

  次点 鴎という名の酒場

いきなり歌詞を貼り付けるくらいだから「能登半島」は大好き。
出だしの突き抜け感が何とも耳に心地よい。
詞も卓抜で殊に赤字部分には拍手を送りたい。

今あらためて聴き直してハッとした。
「能登半島」は吉幾三の「雪国」や「海峡」に
多大な影響を与えたのではないかと―。

去年の「紅白」では紅組のトリをつとめ、
本当にさゆりは大きくなりました。
彼女の本名は石川絹代。
名付けた父さんか母さん(爺さんか婆さんかも?)が
きっと田中絹代の大ファンだったんだろうネ。

ものにはついでということがある。
明日は花の中三トリオに筆先を振ってみたい。