2012年1月9日月曜日

第225話 エルヴィス・オン・スクリーン (その2)

去年の11月から12月にかけて3本観た、
エルヴィス映画の2本目は「ブルー・ハワイ」。
1961年の作品である。
ハワイが舞台のラヴ・コメディで他愛ないことこのうえなく、
映画のデキもけしてよくないが
ハワイアン・ソングのオンパレードはエルヴィス・マニアならずとも
音楽ファンなら十二分に楽しめるハズだ。

タイトル曲の「ブルー・ハワイ」や「ロカ・フラ・ベイビー」は
日本でもそこそこヒットした。
ビング・クロスビーとアンディ・ウイリアムスが歌い、
すでにスタンダードになっていた「ハワイの結婚の歌」も
挿入されており、リバイバル・ヒットとなった。

観ていていちばん驚いたのが
エルヴィスの母親役のアンジェラ・ランズベリー。
アニメのベティちゃんみたいなデッカい目のこの顔、
どこかで見たんだがなァ・・・と思っていたら
アガサ・クリスティ原作の「クリスタル殺人事件」で
ミス・マープルを演じたイギリス女優だった。
「ナイル殺人事件」でも女流作家役で出てたっけ。

映画「ブルー・ハワイ」が日本のミュージック・フィルムに
多大な影響を与えた点も見逃せない。
加山雄三の若大将シリーズなど随所にその匂いがする。
シリーズが始まったのは奇しくも同じ1961年、
因縁を感じずにはいられない。

3本目は「ラスベガス万才」。
1964年の作品ながら没後30周年を記念した、
メモリアル・エディションで、原題は「Love in Las Vegas」。
現在とはまったく異なる、失われしラスヴェガスが映っている。
タイトル曲の「ビバ・ラスベガス」がすばらしく、
映画自体のデキも彼の作品中、
3本の指に、いやいや、ベストかもしれない。

共演のアン・マーグレット抜きには語れない映画で
歌って踊れる彼女の存在感は
ほかの作品の相手役とは比べるべくもない。
歌はそれほどではないものの、踊りはプロダンサー顔負けだ。
美貌とプロポーションにも恵まれたマーグレットだったが
なぜか大成しなかった。
清純さに欠けるところがあって、そこが災いしたのだろう。
ジャック・ニコルソンと共演した「愛の狩人」には
その辺りのしどけなさが如実に表れている。

浅田真央が採用したリストの「愛の夢」が原曲の挿入歌、
「Today,Tomorrow and Forever」がなかなか聴かせる。
ただし、邦題の「恋の讃歌」ってのは何だかなァ。
もっとも「今日も あしたも 永遠に」じゃ、間が抜けてるか。

エルヴィスが亡くなった1977年8月16日はよく覚えている。
バイト先の仲間と4人で麻雀旅行に出掛けており、
伊豆七島は神津島の民宿で
昼めしを食っていたらラジオのニュースが流れた。
その衝撃は射殺されたジョン・レノンのときとまったく同じ。
一同、箸をとめて互いの顔を見つめ合ったものだった。
あれから35年、あのときの連中はどうしているのだろう。