2012年1月20日金曜日

第234話 河豚をも超える鮍刺し

鮍とはなんぞや?
魚偏に皮と書くのだからサカナであることは想像がつく。
そう、察しのよい読者であれば、もうお判りですネ。
エッ、まだお判りにならない?
それではヒントを差し上げましょう。
鮍は皮剥とも書きます。
ハイ、読んで字の如し、カワハギですがな。

実はJ.C.、このカワハギくんには目がありません。
ここ10年はまぐろをよく食べるようになったものの、
それまでは鮨屋に行っても白身一辺倒。
平目や鰈類のように繊細な白身魚が好物で
真鯛・こち・すずき・おこぜ・はた・あいなめ・ほうぼう、
これらのサカナはみんな好き。
中でも鮍は最良の白身の持ち主なんざんす。
逆に好まないのは、かんぱち・ぶり・平政・むつの類い。
その境に居るのが縞鯵で
許容できる脂の限界点がこのサカナなのである。

この時期、刺身の王者は虎河豚かもしれない。
さすがに河豚は旨い、旨いが途中で飽きてくるのも事実。
ポン酢に飽きるのかしら・・・と、
わさび醤油でやったが、まるでピンとこなかった。

よって河豚より鮍に魅力を感じている。
一つには肝の存在がとても大きく、
河豚の場合は命がけで食うところを
鮍ならば超安心、いや安心どころか
この肝の旨さたるや身肉に勝るとも劣らない。

殊に冬場に第二の旬を迎えると、
肝が肥大化してマニアの舌をうならせる。
まあ、そのぶん身が痩せるから
肝に関心のない向きは秋口のほうがより楽しめよう。

最近知ったことだがこの鮍、
海の嫌われ者の越前水母(エチゼンクラゲ)を集団で襲い、
捕食する様子が観察されたそうだ。
でもって嫌われ者の駆除対策における期待の星となった。
だがネ、いわしや秋刀魚みたいに大量水揚げされるサカナと違い、
こんな高級魚におめおめとクラゲ退治をさせるほど、
のんきな漁師はおらんやろ。
まったくもって学者の考えることは机上の空論ばかりなりけり。

だいぶ以前、真冬に愛媛県・松山市を訪れたことがある。
この街では鮍がことのほか珍重され、
市民は親しみをこめて単にハギと呼ぶ。

盛り場の二番町にある「創作料理 川原」で食べた、
肝付きのハギ刺しの旨かったこと。
あこう鯛の煮付けや季節はずれの松茸炭火焼などもやったが
ハギ刺しは際立っていた。
追い討ちをかけたハギのアラの潮汁もまことにけっこうだった。

松山訪問の数日前、
人形町「吉星」で虎河豚のフルコースを奢ってはみたものの、
満足度は「川原」のほうが数段高い。
オマケに支払いが半額ときては何も言うことはない。
鮍の河豚超えは紛れもない事実として認証されてしかるべし。

もしもデパ地下あたりで鮍の姿を目にすることがあったなら
Try it !
You will like it !!

「創作料理 川原」
 愛媛県松山市二番町1-5-1
 089-913-7300