2012年1月6日金曜日

第224話 エルヴィス・オン・スクリーン (その1)

最近、トンと映画館に行かなくなった。
億劫なのである。
メンド臭いのである。
よしんば出掛けてもシリーズ物ばかりで
あれじゃ第1作を観てなきゃワケ判らんと思うから
おっとり刀で途中乗車する気になんかなれやしない。

そんなこってもっぱらTSUTAYAの宅配レンタルに頼っている。
月ぎめで毎月8枚ずつDVDが送られてくるヤツね。
おかげであらゆるジャンルの作品の鑑賞ときたもんだ。
ここ1~2ヶ月の間に
エルヴィス・プレスリーの主演作を3本立て続けに観た。

まず「エルヴィス・オン・ステージ スペシャル・エディション」。
42年前の1970年、ラスヴェガスはインターナショナルホテルでの
ライブ公演を中心に据えたドキュメンタリー映画、
「エルビス・オン・ステージ」の公開30年を記念して
フィルムを修復、再編集したニュー・ヴァージョンである。

観終わっての第一感。
エルヴィスにはやはりライヴがよく似合う。
比べるのもなんだけれどこの4年前、
武道館でビートルズの第1回公演を生で見たが
ステージの完成度ははるかにエルヴィスのほうが上である。

エルヴィスにとって成功の恩人でもあり、
同時に寄生虫とまで酷評された彼のマネージャー、
パーカー大佐がパラマウントと
長期に渡る映画出演契約を結んでしまい、
そのせいでずっとライヴ公演を封じられていた鬱憤を晴らすに
じゅうぶんなステージであり、映像となっている。

それにしてもパーカー大佐は相当に胡散臭い人物だった。
見かけは単なるデブで、出生はよく判っていない。
オランダ出身らしいが無国籍者としてアメリカに入国し、
国籍取得のために軍隊入りしたというのがもっぱらの噂だ。
ヘプバーンの「暗くなるまで待って」や
マックイーンの「華麗なる賭け」に出演した名脇役、
ジャック・ウェストンによく似た風貌をしている。

肝心のステージ映像だが
ベストソングは「サスピシャス・マインド」であろうよ。
バック・コーラスの黒人女性とのからみも含めて
活き活きとした歌いっぷりが観客をノリにノラせる。
映画を観ている者にも
臨場感がモロに伝わってきて実に楽しい。

「この胸のときめきを」、「愛さずにはいられない」、
「明日に架ける橋」など、
他シンガーのヒット曲も存分にカバーして、
なおかつエルヴィス独自の世界に誘う名歌唱は
数限りないアーティストに大きな影響を与えた。

必見のミュージック・フィルムの前には
ビートルズもマイケル・ジャクソンもまるでかすんじゃうもの。
エッ、かすむのはオメエの老眼のせいだ! ってか?
ほっとけや!

=つづく=