2012年1月18日水曜日

第232話 バッテラとベッタラ (その2)

京王線・幡ヶ谷駅にほど近い「魚貞」のことは
以来、ずっと気になっていた。
ときおりデジカメに収めたメニューの写真を眺めながら
訪問の際は何を食べようかと思い描いたりもしていた。

昨日のブログに貼り付けたメニューをいま1度吟味してみよう。
初っ端の上三点盛り(赤貝・はた・まごち)が何ともよい。
すべて好物だからこれだけでも入店の価値大いにアリノスケ。
板長のセンスのよさがうかがい知れる。
もしもこれが(帆立・ぶり・まぐろ)と凡庸なトリオであったなら
鼻も掛けずに素通りの巻であろうよ。

はたかぶと酒蒸し、あらの一夜干し、この2品にも惹かれた。
白子の天ぷら、鯨の立田揚げもけっこうじゃないですか。
バッテラがあるかと思えば、ベッタラもあるぞ。
バッテラについては昨日詳述した。
ベッタラ漬に限らず、たくあん系はワリと好きで
奈良漬や千枚漬なんぞもときどき食べたくなる。

でもネ、残念ながらこういう漬物類は個食に合わない。
だいたい漬物の全盛期はメシはあれどもオカズが少ない、
むか~しの大家族が支えたんではないのかな。
今の世の中、どこで買っても分量が多過ぎて独りじゃ持て余す。
かといってコンビニなんかじゃ買う気になれないしネ。
よって食堂や割烹で見掛けると思わず手が出てしまう。
食べる機会に恵まれないから身体が渇望しているのであろう。

そうしてこうして「魚貞」を訪れたのは撮影日から数えて16日後。
すると、おう、おう、ありました、ありました、
見覚えのあるメニューボードが!
♪ 見覚えのある レインコート
   たそがれの駅で 胸がふるえた ♪

ならぬ、
♪ 見覚えのある メニューボード
   たそがれの店で よだれあふれた ♪

であった。

この日は店内に入るのだから
寒空の下で品書きを吟味する必要はない。
したがって写真は撮っていない。
ていうかぁ~、見もしませんでした。

ところが生ビールを注文してわれに返り愕然。
何とくだんの三点盛りが
(青柳・ぶり・やがら)と大変身を遂げていた。
それはないぜ、セニョール!

が、入店しちまったもんは仕方あるまい。
でもって頼みましたよ、三点盛りを。

ヤガラは好きだからまっ、いいか

ぶりも脂のシツコいヤツでなかったのが救いだ。
生中のお替わりをお願いして、料理の見繕いに専念する。
さあて、どれ、どれ・・・。

=つづく=