2012年12月25日火曜日

第476話 有楽町でロードショウ (その2)

昭和32年当時の東京のロードショウ。
チケットの値段を求めてゆきついた、
松本清張の短編、「声」にはこうあった。

 いったい茂雄にはそんなところがあった。
 名もないような三流会社に勤めていて、
 安月給をこぼしているくせに
 流行型の洋服を月賦で新調したり、
 絶えずネクタイを買い替えたり、
 映画館でも有楽町あたりの高級館に朝子を誘って
 二人で八百円を払ってはいったりした。
 始終借金をしているらしい。
 そんな見栄坊なところが朝子には気になったし、
 性格の不均衡(アンバランス)な面も不安であった。

恋人同士の茂雄と朝(とも)子はほどなく結婚する。
上記は結婚を前にした朝子の心情の吐露である。
三流会社、安月給、月賦、借金、
もちろん現代にも実存しているが、いかにも昭和ですねェ。
有楽町の高級館、二人で八百円、
さんぜんと輝く往時のオサレなデートだったのでしょう。

でなわけで岡山県のY岡サンの問い掛けには
即座にお応えしたのだが問題はそこから始まった。
デスクやソファやベッドの上に拡げちまった10冊の短編集。
いったいどうすんのヨ、コレ?
Book Off にでも売るかァ! バカな、人件費も出ないヨ!

でもって、しっかたナシに読み始めやした。
読書週間でもないのに黙々と・・・・
ちなみにこのチャレンジは現在も進行中であります。
萩本の欽チャンじゃないが、何でこうなるのっ?
まっ、世の中こんなモンだわな。
ここまで書いてアタマが痛くなったので小休止。

キッチンで湯を沸かし、到来物の棒茶を淹れて
なぜか聴いているのは来生たかおのアルバム。
今かかっているのは「セカンド・ラブ」だ。
この曲は哀しいなァ。
流行らせた幸うすき明菜のことを
ぼんやり考えるうちに、曲は「めざめ」に替わった。

このアルバムを聴くのはかれこれ15年ぶりかも・・・。
来生たかおとオネエちゃんの来生えつこは
再びクローズアップされてもいいと思うんだがねェ。

おっと、清張サン、清張サン。
くだんの一作、「声」は結末が存外ながらまずまず楽しめた。
昭和31年の東京の町が次から次へと現れては消える。

銀座→有楽町→世田谷町→日ノ出町(豊島区)→
谷町(文京区)→指ヶ谷町(文京区)→田無(北多摩郡)→
小平町(北多摩郡)→立川→新宿→田端

てな感じ。
ちょいとした「東京だヨおっ母さん」ですな。

=つづく=