2013年3月4日月曜日

第525話 言問橋と吾妻橋 (その2)

上野松坂屋発、亀戸駅ゆきのバスを言問橋で降りた。
言問通りと三ツ目通りの交差点を対角に渡って
「埼玉屋小梅」の前にたたずんでいる。
何年ぶり、いや、10年ぶりかもしれない。

最初にことわっておくが、このお店、
有名な「言問団子」とはまったくの別店である。
地番はともに向島なれど、あちらは5丁目、こちら1丁目、
あちら桜橋のなおも上流、こちら言問橋の東詰、
両店は距離にして1キロ以上離れている。

読者はすでにお見通しだろうが
J.C.は懐かしさに見舞われると、とてつもなくモロい。
常に過去を振り返りながら現在を生きているからだ。
案の定、店先で懐旧の情につまづき、誘い込まれるように店内へ。
ただし、言い訳を頭の中にちゃあんと用意してネ。

寒風吹きさらす中、隅田のほとりをしばらく歩くのだ。
吾妻橋の「23BANCHI CAFE」では
スーパードライのエクストラコールドを飲み干すのだ。
冷えた身体の空きっ腹に、いきなりの冷たい生ビールはよくない。
さいわい、「埼玉屋」には団子の磯辺バージョンがある。
醤油のつけ焼きを海苔で巻いたヤツだ。
そいつをビール前のつまみとしてかじりながら、
川風に吹かれようではないか。

ところが見栄っ張りのこの男、
団子を1本だけ買う勇気がどうしても持てない。
寒い中をやって来るのはP子とて同じこと、彼女にも1本買ってやろう。
でもなァ、大の男がなァ、団子屋にわざわざ入店して団子2本かァ、
これじゃカッコがつかないぜ。
結果、磯辺団子2本、小梅団子1本、
桜もち2つを買い求めたのでありました。

隅田公園では池のほとりにつかの間くつろぐ。
岸辺には数羽のオナガガモが水かきを休めている。
団子を与えようとも思ったが絶対量が足りないので見送った。
身体も冷えているが団子も冷えている。
口中、味気ないことはなはだしいが、
そしゃくするうち、旨みが徐々に増してきた。

1杯目の生ビールが終わりに近づく頃、相方登場。
磯辺団子を進呈し、あらためて乾杯だ。
フードの持ち込みはルール違反なのだが
ここのつまみに旨いモノはないし、
団子1本くらい大目に見てくれるだろう。

「23BANCHI CAFE」のエクストラコールドは大好きだけれど、
真冬は通常のスーパードライのほうがいいかも・・・。
傍らでP子がまだ団子をモグモグやっている。
食べ終わるの待って、夕暮れの隅田川を浅草側に渡り返す。
吾妻橋の上で振り向けば
黄金のオブジェの向こうにスカイツリーがそびえ立つ。
この橋の西詰は絶好の撮影スポットになっている。

=つづく=

「埼玉屋小梅」
 東京都墨田区向島1-5-5
 03-3622-1214

「23BANCHI CAFE」
 東京都墨田区吾妻橋1-23-36
 03-5608-3831