2013年3月21日木曜日

第538話 近くで演歌を聴きながら (その2)

ニューヨーク時代のポン友・ホケンは
年に数回、帰国してくるのでそのたびに卓を囲むことになる。
WBCで日本が一敗地にまみれた直後にメールが届いた。
45年もWBAを観てきただけに彼の論評には説得力がある。
ちょいと紹介してみたい。

WBCは寒さと相手ピッチャーの投球間隔のスピードにやられたね。
なぜ前日まで気温30度超えのアリゾナにいたのか?
サンフランは風が強く、夕刻は10度以下で野外球場はチョー寒いんだ
日本の野球はスロープレーが目立つ、特にピッチャーがっ。
ゆえにバッターが間合いを取りづらく、あわててボール球を振っていた。

まさにその通り。
決勝戦の雨模様を見たら、なんでこの時期にフリスコでやるの? 
当然の疑問でありましょう。
ライバルに南の国が多いから
アメリカにアドバンテージありと算段したのだろうか?
プエルトリコ戦を将棋に例えれば
名人が若手に早指し戦でヤラれたようなもの。
まっ、そこまでの実力差はないけれど・・・。

ハナシを元に戻す。
昨年の暮れだったか、春日の雀荘「ロンロン」に
ホケンがスーさんを伴って現れたのだった。
この人が桁はずれにオモロい人物でオマケに大の歌謡曲ファン。
J.C.はゲーム中、よく鼻歌まじりで牌の取捨を繰り返している。
スーサンも負けじと歌を口ずさむので
互いに歌謡曲愛好者であることが判明したわけだ。

麻雀もさることながら、スーさんの将棋は玄人はだし。
われわれのヘボ将棋を上から目線で眺めながら
せせら笑ったりもしている。
「あの玉(ぎょく)を詰ますにはケツから角を打つんだヨ」―
局後にそんな科白をささやかれちゃうのだ。

ある日。
「オカちゃん、オレのを20キョクほど録ったヤツあげるからな」―
言われたときに感心したものだ。
ホオ~ッ、スーさんクラスになると自分の棋譜を記録してるのか。
録ったということはEテレのNHK杯みたいに録画してるのかも・・・。

「さすがじゃないッスか! そこまでいくともはやプロ棋士です」
「ん? 何だって、将棋? フッ、フハッハハ!
 ちゃうちゃう、20キョクって将棋じゃないよ、カラオケだヨ」
「エエ~ッ、20局じゃなくて20曲なのっ!」
けっこう笑えるでしょう? 漫才のサンドイッチマンも真っ青だ。

そうして手渡されたCD2枚組は全37曲、心底ビックラこいた。
しかも曲名と歌い手のリスト付きでっせ。
世にカラオケが好きだから一緒に歌いに行こうという人はいても
自分で歌ったのを録音して他人にくれるって人は前代未聞。
今もそれを聴きながらコレを書いている。

=つづく=