2013年3月19日火曜日

第536話 はるばるきたぜ 雑色へ (その3)

つい、食べ過ぎちゃった「もつやき三平」をあとに
第一京浜国道を渡り返して雑色の駅近くに戻った。
ブルガリア料理店「ザゴリエ」は小さな路地にひっそりとある。
珍しいブルガリア料理店は都内にもう1軒、
東京駅そばの八重洲に「ソフィア」という店があるだけだ。
ここは明治乳業の直営店で
大関・琴欧州のCMでおなじみのブルガリアヨーグルトは
明治乳業の製品だ。
あとは小田急線・代々木八幡に
「ヨーグルト・サン」なるブルガリアン・カフェがあるらしい。

銀座から表参道に移転したルーマニア料理店「ダリエ」は
何度か訪れており、ここの料理は好きだ。
ブルガリアはルーマニアの南に位置するする国だから
料理も似ているものと想像していたが実際はずいぶん違った。
ブルガリア料理はそのまた南側、ギリシャとトルコの影響が色濃い。
ギリシャ料理のムサカがあるし、
ショプスカサラダはトルコのチョバンサラタ(羊飼いのサラダ)に
山羊乳のチーズをトッピングした感じ。

赤ワインのテラ・タングラ マヴルッド '10年を抜いてもらう。
もちろんブルガリア産で、しなやかな口当たり。
水で割ると白濁する地酒・ラキヤも1杯ずつ飲んだ。
トルコのラク、ギリシャのウゾと同様にアニスが香る国民酒。

メニューを吟味したものの、
結局、注文したのは前記のショプスカサラダとムサカのみ。
どちらもボリューム満点だった。
シェヴレ(山羊乳チーズ)があまり好きではないから
ショプスカサラダよりトルコのチョバンサラタのほうが口に合う。
ムサカもギリシャのものはナスが主張するが
こちらはじゃが芋たっぷりで相当ポテトチック。
どちらかといえば、ナスのほうがありがたいな。

ワインはフルボトルだし、
本来ならブルガリア名物のキュフテやケバブチェなど、
ハンバーグ系のグリルと合わせるべきだが
何せ、炭火であぶったもつ焼きを何本も食べたあと、
とてもとても食指は動かない。

居酒屋のはしごなら何とでもなるけれど、
本格的なレストランが組み込まれると、どうにもならない。
近頃はフルコースを食する機会がめっきりと減っている。
酒量のほうは衰える気配がないのになァ。
朝から飲むわけじゃないから、まっ、いいか。

食後は二人してレトロスペクティブな雑色商店街をぶらぶらと。
いつのまにか(去年の秋らしい)駅は高架化されたのに
商店街はほとんど変わっちゃいない。
映画「三丁目の夕日」のロケに使えると思えるほどのもの。

雑色は品川と横浜の中間あたり。
夕方のラッシュと重なったらいやだが
さいわいに「もつやき三平」は早い時間から営業している。
毎週はムリでも月に一度くらいは訪れることになりそうだ。
そんなことをぼんやりと考えながら
相変わらずスピード出し過ぎの電車に揺られゆられて帰った。
社名に忠実なのか、京浜急行は飛ばし過ぎるんだヨ。
小学一年生のときからずっとそう思ってきた。

=おしまい=

「ザゴリエ」
 東京都大田区仲六郷2-42-3
 050-3586-310