2013年6月10日月曜日

第595話 荷風の”食跡”を訪ねて (その3)

永井荷風ゆかりの洋食店、「アリゾナ・キッチン」での食事会。
その夜はあいにくの雨模様。
「筋肉マン」でおなじみの中野和雄サン曰く、
この食事会はかなりの確率で雨にたたられているんですと―。

そういえば、前回もそうだったなァ。
合羽橋通りのどぜう屋から田原町のスナックまでの近距離を
雨足の激しさに歩くことままならず、
タクシーに分乗して移動したっけ・・・。

さてさて、J.C.にとっても久方ぶりの「アリゾナ・キッチン」。
店に入ってすぐ右手の壁には昔も今も
荷風の食事風景のパネルが掲げられている。
リラックスした自然体は
なかなかシャレたポートレートに仕上がっている。

雷門通りの日本そば店「尾張屋本店」には
かしわ南蛮をすすり込む荷風の写真が飾られているが
あちらは盗み撮りのせいもあり、そこいらの老人さながら。
とてもとても稀代の文豪には見えない。

マルケ州産の赤ワインを楽しみながらオーダーした前菜は3種6皿。

 スモークサーモンのマリネ  
 はまぐりのオーヴン焼き  
 牛肉のカルパッチョ 

牛肉にはあまり相性がいいとも思えないアヴォカドが添えられている。
各自、皿に取り分けて味わってはみたものの、
すべて可も不可もナシ。
もともと此度は話題先行、お味のほうは二の次だから仕方がない。

続いて第二弾の料理も3種6皿。
 
 生ハムとパルミジャーノのホワイトピッツァ
 魚貝のミックスフライ
 チキン・クレオール

ピッツァはイタリア料理店には及ばないけどまずまず。
ミックスフライは海老も帆立も小粒に過ぎる。
カジキさえもずいぶんと小さく切り分けたものだ。

目玉は荷風がもっとも好んだチキン・クレオール。
鳥のもも肉とレバーのブラウンシチューだ。
クレオール料理はニューオリンズを中心としたルイジアナ州のもので
当地のケイジャン料理が庶民の味なら
クレオールは支配者階級の上品な味というくくりになっている。
さすがに当店の名物とあってこれはなかなかの仕上がりだ。

とは言え、やはり料理にはもの足りなさが残った。
まっ、”アリゾナ”だけにたまにゃあ、こういうのも”ありぞな”、もし。

=おしまい=

「アリゾナ・キッチン」
 東京都台東区浅草1-34-2
 03-3843-4932