文京区・根津の「とうふ工房 須田」にて日曜日のひととき。
朝食も昼食もメニューは”いなり御膳”ただ一品。
注文する手間が省けて
接客のオバちゃんの「お食事ですか?」の問い掛けに
客はただ「ハイ」とひと言応えるのみ。
待つこと数分で食膳が運ばれた。
百聞は一見に如かず、ご覧くだされ。
手前は二口サイズの豆いなりが5カン。
酢めしを包む油揚げはあっさりと炊かれて上品な味。
都内、ことに下町に散在するおいなりさんの専門店に
なじみの深い向きにはいささかのもの足りなさが残ろう。
なぜなら郷愁を誘う、あの甘じょっぱさがないからだ。
ご覧のように漬け生姜もちゃあんとあしらわれている。
丁寧な仕事ぶりと言えよう。
左奥のまあるいお月さまみたいなのはすくい豆腐。
”いなり御膳”を名乗ってはいても主役はこれであろうヨ。
しっかしデカい。
朱塗りの椀を手に取ったとき、ズシリときたもんネ。
おそらく300グラムは下らない代物だ。
だけどサ、豆腐っていちどきに
こんなに食べるものじゃないんじゃないの。
「お塩だけでも美味しく食べられます」との仰せに最初は従う。
でも、やっぱり途中で飽きてくる。
さすがにカツ節はなかったが
たっぷりのおろし生姜とさらしねぎに助けられ、
奮闘努力してみたものの、
結局は薬局、1/3をやっつけるのがやっと。
いや、マイッタぜ。
満月クンの隣りの小皿は一見玉子焼きのよう。
しかしてその実態は豆腐田楽なのだった。
焼き豆腐に田楽味噌が塗りたくられておる。
味噌は日替わりで朴葉味噌だったり鳥味噌だったり。
薄めの味付けが多いなか、
味噌のしょっぱさに白飯がほしくなる。
でも、これとて2切れでじゅうぶん、3切れは多いや。
田楽の右側も一見ヨーグルトのよう。
これはシメジの豆腐ドレッシングと称するものだ。
何だかつかみどころのないひと鉢で
女性には好まれようが、オトコの食べものではないネ。
殊に酒飲みは一顧だにしないのではないか。
表面に散らされた白胡麻がどことなく白々しく空しい。
右を向いても左を見ても豆腐と油揚げの絡み合い、
どこに男の夢がある。
豆腐畑につかまって、ホンの1~2切れでいいから
焼きたら子か塩ジャケがほしくなってきた。
=つづく=
朝食も昼食もメニューは”いなり御膳”ただ一品。
注文する手間が省けて
接客のオバちゃんの「お食事ですか?」の問い掛けに
客はただ「ハイ」とひと言応えるのみ。
待つこと数分で食膳が運ばれた。
百聞は一見に如かず、ご覧くだされ。
一面豆腐と油揚げだらけ
一見に如かずといえども、よく判らんから注釈を加えよう。手前は二口サイズの豆いなりが5カン。
酢めしを包む油揚げはあっさりと炊かれて上品な味。
都内、ことに下町に散在するおいなりさんの専門店に
なじみの深い向きにはいささかのもの足りなさが残ろう。
なぜなら郷愁を誘う、あの甘じょっぱさがないからだ。
ご覧のように漬け生姜もちゃあんとあしらわれている。
丁寧な仕事ぶりと言えよう。
左奥のまあるいお月さまみたいなのはすくい豆腐。
”いなり御膳”を名乗ってはいても主役はこれであろうヨ。
しっかしデカい。
朱塗りの椀を手に取ったとき、ズシリときたもんネ。
おそらく300グラムは下らない代物だ。
だけどサ、豆腐っていちどきに
こんなに食べるものじゃないんじゃないの。
「お塩だけでも美味しく食べられます」との仰せに最初は従う。
でも、やっぱり途中で飽きてくる。
さすがにカツ節はなかったが
たっぷりのおろし生姜とさらしねぎに助けられ、
奮闘努力してみたものの、
結局は薬局、1/3をやっつけるのがやっと。
いや、マイッタぜ。
満月クンの隣りの小皿は一見玉子焼きのよう。
しかしてその実態は豆腐田楽なのだった。
焼き豆腐に田楽味噌が塗りたくられておる。
味噌は日替わりで朴葉味噌だったり鳥味噌だったり。
薄めの味付けが多いなか、
味噌のしょっぱさに白飯がほしくなる。
でも、これとて2切れでじゅうぶん、3切れは多いや。
田楽の右側も一見ヨーグルトのよう。
これはシメジの豆腐ドレッシングと称するものだ。
何だかつかみどころのないひと鉢で
女性には好まれようが、オトコの食べものではないネ。
殊に酒飲みは一顧だにしないのではないか。
表面に散らされた白胡麻がどことなく白々しく空しい。
右を向いても左を見ても豆腐と油揚げの絡み合い、
どこに男の夢がある。
豆腐畑につかまって、ホンの1~2切れでいいから
焼きたら子か塩ジャケがほしくなってきた。
=つづく=