2013年6月3日月曜日

第590話 愛しゅてるのに哀愁 この歌詞が魅了する Vol.1

今日は新シリーズの第一回です。
題して”この歌詞が魅了する”。
星の数ほどあるにっぽんの歌にあって
心に残る名歌詞にスポットライトを当ててゆきたいと思います。
もっともJ.C.の偏った好みに基づいているので
その偏向には目をつぶってください。

 ♪  惚れて 惚れて 
   惚れていながら 行くおれに 
   旅をせかせる ベルの音 
   つらいホームに 来は来たが 
   未練心に つまづいて 
   落す涙の 哀愁列車   ♪
       (作詞:横井弘 )

三橋美智也の「哀愁列車」の一番である。
赤字の部分がハイライト。
”未練心につまづいて”、ここがすばらしい。
出そうで出ないフレーズとはこのことだろう。
まだ相手のことを好きなのに別れる破目に陥った方なら
誰しも実感できる胸の痛みがコレでしょう。

リリースされたのは昭和31年。
作曲は鎌多俊与。
同じ年のもう一つの大ヒット曲、
「リンゴ村から」はリアルタイムでよく覚えているのに
「哀愁列車」はトンと記憶にない。

当時、J.C.は満5歳の幼稚園生。
棲んでいた長野では周りの大人がよく「リンゴ村から」を口ずさんでいた。
これは長野県が青森県に次ぐりんごの大産地であったことと
無関係ではあるまい。

 ♪  もっと素直に僕の 愛を信じてほしい
   一緒に住みたいよ できるものならば
   誰か君にやきもち そして疑うなんて
   君だけに本当の 心みせてきた
   会えない時間が 愛育てるのさ
   目をつぶれば君がいる
   友だちと恋人の 境を決めた以上
   もう泣くのも平気 よろしく哀愁  ♪
          (作詞:安井かずみ)

郷ひろみが歌った「よろしく哀愁」は1974年のリリース。
あの筒美京平の作曲である。
同じ”哀愁”でも趣きがずいぶんと違うものだ。
”会えない時間が愛育てるのさ”、ここが白眉。

ロシアの文豪・ドストエフスキーが残した言葉。
「コロンブスが幸せだったのは
 アメリカ大陸を発見したときではない、発見しつつあった時だ」
けだし名言。
実際に恋人と会っているときよりも、会いに向かっているときのほうが
より心は弾むだろうし、会えない時間に愛はより大きく育まれるのでは―。

男と女は一つ屋根の下に暮らして、のべつ顔を合わせているよりも
時間をおき、距離をおいたほうが
シアワセな関係を維持できるのではなかろうか。
いや、そうだヨ、きっと。