2013年6月13日木曜日

第598話 ボルドーで途中下車 (その2)

フランス映画、「ヘッドライト」は心にしみ入る名画だった。
初見はTVの洋画劇場じゃなかったかな? 
たぶんそうだろう。
近いうちにぜひ、TSUTAYAから取り寄せて再見してみよう。
原題は「とるに足らない人々」。
主役は当時のトップスター、ジャン・ギャバンだ。

ギャバンを初めて見たのは大作「レ・ミゼラブル」。
小学六年生のときに池袋西口の小さな洋画劇場で父親と観た。
ちょうど欧米の映画に目覚めた頃で
子ども心にも何だかスゲエ映画だなと感じ入ったことを覚えている。
その四半世紀後、ブロードウェイのミュージカルを観劇したが
インパクトの強さは映画のほうが断然であった。

「ヘッドライト」のギャバンの相手役は
「学生たちの道」や「フランス式十戒」で
若き日のアラン・ドロンと共演したフランソワーズ・アルヌール。
フランス的な匂いがプンプンしてアメリカ女優にはまずいないタイプだ。
どう表現したらよいだろう、コケティッシュとは違う、
あどけないセックス・アピールの持ち主とでも言おうか・・・。

監督は「地下室のメロディー」、「シシリアン」のアンリ・ヴェルヌイユ。
ともにギャバンとドロンの競演なのだが、映画のデキは今ひとつ。
ミッシェル・マーニュとエンニオ・モリコーネの音楽はよかったけど・・・。
ヴェルヌイユの作品では「ヘッドライト」が生涯ベストになろうか。

音楽は不朽の名曲「枯葉」のジョセフ・コズマだ。
J.C.にとっては「枯葉」に加え、
「パリの空の下」、「ラ・ボエーム」がシャンソンのベストスリー。
さすがはコズマ、「ヘッドライト」のテーマも
もの悲しく、うら寂しく、耳朶(じだ)に訴え続けてやまない。

ここで再びひかりTVの旅チャンネル。
サン=テミリオンの大衆食堂のテーブルに置かれた赤ワインを見て
思い出したことがもう一つあった。

あれは1971年、初めてボルドーを訪れたときのことだ。
たまたま昼めしに入った食堂のテーブルにまさしく赤のボトルが1本。
うれしくて思わず笑みがこぼれたが、ふとわれに返った。
何せ貧困学生の貧乏旅行につき、
フルボトルに手を出しだりしたら、ナンボ取られるか知れたものではない。

さっそくセルビス担当のオバちゃんに訊ねましたネ、
「コンビアン(コレ、おいくら)?」
オバちゃん、にっこり笑って
「プール・ヴー(アンタのもんですヨ)、ムッシュウ!」
エッ? ヘッ! やったネ! てなもんですな。
歓び勇んだJ.C、か~るく1本空けちゃいました。
恥ずかしながら、若いうちから呑ん兵衛だったんです。

=つづく=