2013年12月13日金曜日

第729話 「あしたのジョー」の町から (その4)

さてさて、メルとも変じて
のみともとなった遠来の志との3軒目。
行く先は現在の東京にかろうじて残った花街の一つ、
隅田川の向こう岸は向島である。

その前に山谷地区をひとしきり散策して
到着したのは吉原大門だ。
門前には大正建築も立派な天丼の「土手の伊勢屋」と
ケトバシの「中江」がその雄姿を競い合っている。

ちなみに吉原大門は”よしわらおおもん”と称する。
芝増上寺の大門は”だいもん”で、こちらは”おおもん”。
かたや門前町、こなた色街。
日本最大のソープランド街・吉原の東の入り口だ。
読み方が異なるのは仏さまと観音さま(シモネタ失礼ッ!)を
同居させるわけにはまいりませんもの。

界隈を案内したあと、土手通りを南下してゆく。
小唄の入門歌、「梅は咲いたか」で

 ♪  舟から上がって 土手八丁 
   吉原へ ごあんな~いっ ♪

こう唄われた土手通り。

地方橋の交差点をちょいと左折し、山谷堀公園に入る。
堀を埋め立てた公園だからヤケに細長い。
江戸の昔は柳橋に遊んだ札差のお大尽が
小舟を仕立てて大川(隅田川)を上り、
今戸橋から堀に入って吉原へ繰り出した。

隅田川に架かる唯一の歩行者専用橋・桜橋を渡り、
いよいよ向島にご入来。
エリアには珍しいモダンな居酒屋、「かどや」の暖簾をくぐった。
読者諸兄にこの店はオススメですゾ。

よしんば家族サービス、あるいはカノジョとのデートで
はからずもスカイツリーに出掛けたとしましょう。
ツリーの中で開業しているのは
わざわざ訪れなくともよい大手資本の店ばかり。
そんなとき、徒歩圏内の「かどや」に案内してごらんなさい。
子どもはともかくも、カノジョはいたく感激してくれるハズだ。

キリンビールは横浜、アサヒは浅草がお膝元だが
浅草寺の浅草は台東区で川を渡れば墨田区。
厳密には吾妻橋や向島がアサヒ本来のお膝元となる。
てなこって本日3回目のグラス合わせはスーパードライ。

突き出しの蒸し海胆豆腐が小粋じゃないの。
粋筋をうならせるにはこうでなくっちゃいけない。
心なしか目がトロンとしてきたN目サン、
意を決したかのように冷酒を所望した。

おっと、青森の田酒ときましたか!
ダイジョビかいな?
寅さんはOKだが、虎さんは困るんですけど・・・。

=つづく=