2013年12月18日水曜日

第732話 ドドンパとドゥビドゥヴァー (その2)

43年ぶりに再会した日活映画、「私が棄てた女」。
ちょうど同時期に観たイタリア映画、
P・ジェルミ監督、S・サンドレッリ主演の
「誘惑されて棄てられて」とヤケにダブるが
そこは日・伊の違い、こちらは暗くあちらは明るい。
月と太陽にも似た彼我の差。

昭和30年代の日本女性は現代のようにチヤホヤされておらず、
社会的に虐げられた日陰の部分を内包していた。
美人でも魅力的でもない不細工なミツ(小林)と
吉岡(河原崎)がつき合っていることを知っている、
学友の長島(江守徹)は吉岡に言い放つ。

「女は男のレベルメーター、
 たとえば豚の仔が可愛いからって
 一生その豚抱いて暮らせるか?」

こうまで言われちゃ、
この役を都はるみに演じさせるワケにはいくまい。
男が女を見下していただけではない。
マリ子(浅丘)も母親のユリ子(加藤治子)に言われる。

「女はとにかく、自分の不幸を人に
 見透かされたら おしまいなんだから・・・」

そんな時代だったんだねェ。
女性にとってはまだ夜明け前、
陽が昇るまで今しばらくの時間を要する時代だったのだろう。

得意先の接待で温泉地に出向いた吉岡は
ミツに売春を強要した過去のある女、
しま子(夏海千佳子)とそこで邂逅する。
未練心につまづきながら、
心の奥底に断ちがたいミツへの恋慕を抱える彼は
彼女の居場所をしま子から訊きだす。

このときいきなりバックに流れたのが

 ♪ あなた知ってる 港ヨコハマ 
   街の並木に 潮風吹けば 
   花散る夜を 惜しむよに 
   伊勢佐木あたりに 灯がともる 
   恋と情けの ドゥドゥビ ドゥビドゥビ
    ドゥビドゥヴァー  灯がともる ♪
        (作詞:川内康範)

「伊勢佐木町ブルース」は1968年の年明けに発表された。
初見の際には気にもとめずに聞き流したが
この曲は45年を経た今も新鮮、ちっとも古びていない。
青江三奈のハスキーヴォイスが流れたとき、
胸の奥でパチンと弾けるものがあった。

映画自体はどんどん歳を重ねていくのに
傑出した楽曲はけっして歳をとらないものなんですネ。

=つづく=