2013年12月19日木曜日

第733話 ドドンパとドゥビドゥヴァー (その3)

歌は世につれ、世は歌につれ。
誰が言い出しっぺか存ぜぬが
昔の人は上手いことを言ったもんですなァ。

ともあれ、1本の映画をまだ引きずっている。
いかげんにしろ!  ってか?
いや、ごもっとも、やめます、やめます、今回で。

映画の中で歌われた「東京ドドンパ娘」はウチにない。
「伊勢佐木町ブルース」のほうは古いカセットがあった。
青江三奈のヒット曲集で、それを聴きながらコレを書いている。
今かかっているのは「大田ブルース」。

でもねェ、1969年の「私が棄てた女」に
ドドンパとドゥビドゥヴァーが同居しているとは思わなんだ。
そしてとにかくこの作品、
配役陣、ロケ地ともに観客をまったく飽きさせない。

すでに紹介した役者以外にもなかなかの曲者揃い。
小沢昭一と加藤武は実生活の盟友同士だったが
それぞれに個性的な役回りをキチンとこなしている。
辰巳柳太郎と大滝秀治は兄弟役。
劇中、二人の産婦人科医が登場して
かたや三代目・水戸黄門の佐野浅夫、
こなた原作者の遠藤周作だってんだから笑わせる。

カメラも1960年代の東京をあちこち映し出してくれる。
何といっても強烈な印象を残すのが
五反田駅近くの目黒川沿い。
東急池上線・高架下のうらぶれ感がすばらしい。

五反田を捉えた映画となると、第一感は裕次郎の「嵐を呼ぶ男」。
しかし、あれは皇后陛下の生家があった池田山に近い東五反田。
こちらは西五反田で、こう言ってはなんだが
お品(ひん)がだいぶ下がる。
同じ目黒川でも桜の名所の中目黒界隈とは
似ても似つかぬ流れがドブ川に見えないこともないほどだ。

成城学園前の桜並木、代官山のマンションと、
カメラは自由自在に東京を駆け巡る。
忘れられないのは上野動物園の西園。
鵜の池に面するここは往時、水上動物園と呼ばれていた。
それがいつの間にか西園と改名されたのだ。

田舎から上京してきた吉岡の母親と弟が池畔に憩う。
弟には養子に出る話しが持ち上がっている。
卓上にストローの刺さった3本のペプシコーラ。
協賛しているのだろう、ペプシは随所に登場する。

バックには池に遊ぶ水鳥たち。
すでにこの時代から目立つのは真鴨ではなく、尾長鴨。
現在も主流は尾長鴨で真鴨はめったに見られない。
むしろ嘴広(ハシビロ)鴨のほうが多いくらいだ。

水のある風景は人の心を和ませる。
ましてやそこに生きものの姿があればなおさらのこと。
不忍池周辺は23区内に残された数少ない景勝地。
昨日に続いて小雨交じりの今日だが
雨が上がったら池のほとりを訪れようと思う。
水鳥を脇に見ながら明日の原稿を書くんです。

=おしまい=