2013年12月20日金曜日

第734話 看板にたぶらかされて (その1)

昨日は一昨日に続いてうっとうしい雨降り。
イヤだねェ、気分がクサクサしてきちゃう。
結局、池のほとりに赴くこと能わず、
自宅でコレを書きました。

新宿区・神楽坂でパエリアの昼食をとったのは
かれこれひと月ほど前のこと。
街のランドマークと呼んでもイチャモンのつけようのない、
イチャモン天、もとい毘沙門(びしゃもん)天・善国寺。
その門前のビル3階にあるパエリア専門店「エリゼ」に入店した。

小さなビルの入口に
これまた小さな立て看板を見初めたのがそもそものキッカケだ。
看板の写真には
鉄鍋のパエリア、小皿のサラダ、グラスの赤ワインがワンショット。
そしてコピーは
3F エリゼ ランチ パエリア1人前1000円 
サラダ コーヒー or 紅茶付 (ワインは含まれていません)

写真のパエリアには小海老2尾、ムール貝2個、
アサリ数個が盛込まれ、これで千円は安いなァという印象。
まあ、値段も値段だし、ランチタイムのことだから
炊き立てであるはずもないが、つい誘われてしまった。

店の切盛りは初老の夫婦二人きりである。
初老といっても店主のほうは熟老の域に突入している。
調理を妻、接客を夫というケースはけして珍しくはないが
通常は逆であることがはるかに多い。

先客は中年カップルが1組だけで
店主との会話から初訪問の様子だ。
席数は4人掛けX2卓、2人掛けX2卓、
6席のカウンターにがあるものの、昼は使われていなかった。
夜なら独り飲みに打ってつけだろう。

壁のメニューボードを見たJ.C.、途端に首をかしげた。

= パエリアランチ =
Aランチ ¥1200 生ハムサラダ コーヒー or 紅茶付
Bランチ ¥1500 生ハムサラダ デザート コーヒー or 紅茶付

おやおや、階下の看板にあった¥1000ランチが見当たらないゾ。
仕方なく(訊き質せばいいんだけれど)Aランチを所望する。
200円の上乗せで普通のサラダが生ハムサラダに昇級するようだ。

待つこと10分弱。
現れたパエリアは案の定、温め直しのシーフードピラフだった。
ポーションは小さく、サフランも香らず、これでは美味しいわけがない。
しかも海老もムールもわずかに1ピースづつ、アサリとイカが2片づつ。
あとは緑・赤・黄のトリオ・ロス・ピメント。
これは明らかに羊頭狗肉、”看板に偽りあり”だろうヨ。
階下の看板で文字通り客を釣り上げる商法は
ちょいとばかりあざといんじゃなくって?

=つづく=