2013年12月10日火曜日

第726話 「あしたのジョー」の町から (その1)

隅田川に架かる言問橋の西詰に端を発し、
浅草から逃れるように北上してゆく吉野通り。
今戸を過ぎ、清川を超え、
東西に走る明治通りと十文字に交わる場所が泪橋交差点だ。

江戸の昔には小塚原の刑場がすぐそばにあり、
処刑を前にした罪人がこの世の見納めにと渡った橋が泪橋。
往時は思川なる川が橋の下を流れていたが
すでに暗渠化され、橋の名は交差点の標識に残るばかり。

この土地を一躍有名にしたのが「少年マガジン」に
1970年をはさんで5年ほど連載された「あしたのジョー」。
物語は橋のたもとのボクシングジムから始まった。
ジムの会長はもちろん隻眼の丹下段平である。

北九州からN目サンが上京してきた。
当ブログの長い読者の方で
以前、一度だけお会いしたことがあり、
以来、メールの交換が数回あった。
飲み歩き・食べ歩きがお好きなようで
「ぜひ一度、酒盃を交わしましょう」―約してから2年は経ったか。

その約束をやっと果たすことができた。
こういう場合・・・って、どういう場合だ! ってか。
いえ、ヨソからやって来る方々に
東京の飲み処・食べ処を案内する場合ですがな。
J.C.はなるたけリクエストに応えるようにしている。

今回のN目サンの要望はこのようなものだった。

浅草が大好きです。
東京訪問の機会があると、必ず一度は出向いて飲食しています。
J.C.サンの「浅草を食べる」と「下町を食べる」をバッグに潜ませて。
もし、お許し願えるのなら浅草でも観光客が行かない、
ディープ感漂うスポットにお連れくださいませんでしょうか?
おいしいお酒とおつまみがあれば
わたくしは何処へでも着いてまいります。
お引き回しのほど、よろしくお願いいたします。

てなわけでお願いされちゃいました。
これは思い出に残りうる一夜にしなければいけないゾ。

上京前のやり取りで下町情緒たっぷりの、
それも偏屈なオヤジがいる飲み屋に行ってみたい。
岡林信康の「山谷ブルース」が好きだから
山谷の町にも足を踏み入れてみたい。
今もなお東京に残る花街・向島の香りをかいでみたい。

いろいろと、”みたい具体案”が浮上してきた。
ふ~む、そうかァ、なるほどねェ。
振り出しを「あしたのジョー」の町にしてみようかの。
そんなアイデアが浮かんで膝をポンと打ったのでした。

=つづく=