2013年12月17日火曜日

第731話 ドドンパとドゥビドゥヴァー (その1)

胸の奥で澱(おり)のようにわだかまっていた映画に再会した。
浦山桐郎監督の日活映画「私が棄てた女」(1969)。
原作は遠藤周作である。

ひかりTVの日本映画専門チャンネルが
5日間に渡って毎朝9時から上映してくれ、2度も観てしまった。
池袋・文芸挫(文芸地下だったかも?)での初見は
確か封切りの翌年、大学に入学した年だったと思う。

主人公の吉岡(河原崎長一郎)は
自動車部品を扱う会社のサラリーマン。
重役の姪で同僚のマリ子(浅丘ルリ子)を妻としている。
彼には学生時代に性欲を満たすためだけに抱き、
棄てたミツ(小林トシエ)という名の女工との過去があった。

 ♪ 好きになったら はなれられない
   それは はじめてのひと
   ふるえちゃうけど やっぱり待っている
   それは始めてのキッス 甘いキッス
   夜をこがして 胸をこがして
   はじけるリズム
   ドドンパ ドドンパ ドドンパが 
   あたしの胸に
   消すに消せない 火をつけた  ♪
         (作詞:宮川哲夫)

湘南・逗子海岸でドドンパを踊る若者たちがいた。
屈託のない笑顔でミツは輪の中に飛び込む。
ミツにとって吉岡は初めての人。
翌朝、まだ浜の小屋で眠っているミツを置き去りにして
吉岡は独り、逗子駅のプラットホームに立つのだった。

「東京ドドンパ娘」は1961年のリリース。
歌手・渡辺マリは一発屋で終わったがドドンパのリズムは
翌年、北原謙二の「若いふたり」に継承される。
この二つのヒット曲はJ.C.の中に
忘れ得ぬ記憶となって残存しているのだ。

当初、監督の桐山は吉岡に小林旭、
ミツには何と、歌手の都はるみをイメージしていたという。
実現しなかったのはギャラの問題とされているが
実際はそうではあるまい。
小林はともかくも、都にはイメージダウンにつながったハズ。
とにかく、ミツという女性はドン臭さの極みとして描かれており、
すでにスター歌手に飛躍を遂げていた都にはできない相談だ。
そして旭とルリ子の共演では”渡り鳥シリーズ”からの脱却能わず、
失敗作に終わった可能性が高い。

当時の世相がそうだったのだろうか、
今では物議をかもしそうな女性蔑視の台詞が
ふんだんに盛り込まれている。
何せ、女を仔豚に例えたりもするんだから
無茶苦茶でござりまするがな!

=つづく=