2013年12月3日火曜日

第721話 「ザ・商社」に血が騒ぐ (その1)

先週の月・火・水・木曜日と4日間に渡り、
1980年に制作されたNHKドラマ、「ザ・商社」が
ファミリー劇場HDチャンネル(ひかりTV)で放映された。
これまで何度か再放送されているが観たのは33年ぶりのこと。
いや、年甲斐もなく血が騒いだ。

かつての日本十大総合商社の一角、
安宅産業の崩壊を描いたドラマの原作は松本清張の「空の城」。
主要キャストは山崎努、夏目雅子、十三代目・片岡仁左衛門、
中村玉緒、水沢アキ、浜田光夫といった面々。

山崎の存在感に圧倒される。
これ以上のハマリ役はないのではないか、おそれいってしまった。
古くは黒澤明の「天国と地獄」、「赤ひげ」、「影武者」。
時代やや下って「お葬式」、「タンポポ」、
「マルサの女」など、一連の伊丹十三作品。
そのいずれよりも、このTVドラマの上杉二郎は衝撃的だ。

亡くなる5年前の夏目雅子もがんばった。
やたらめったらピアノをかき鳴らす曲はショパンの「幻想即興曲」。
脱がなきゃならないシーンでもないのに
カタチのよいバストトップを披露してくれもした。
彼女のニップルにまたもや血が騒いだ。

「なめたらイカンぜよ!」の名セリフで
一躍話題となった映画「鬼龍院花子」でも脱いだが
「ザ・商社」はそれに先立つこと2年。
さらに子どもも観られるTVドラマ、しかもお堅いNHK。
いやはや、斬新でありました。

それにしても山崎努と仲代達矢、
ある意味、よく似た個性派俳優との連続共演は
あいだに大河ドラマの「おんな太閤記」や
TBSの「野々村病院物語」をはさんでいるにせよ、
夏目雅子は女優冥利に尽きたのではなかろうか。

安宅産業はドラマでは江坂産業。
社主に扮する十三代・片岡仁左衛門がまたピッタリ。
ねちっこいアクが持ち味の役どころは
関西の役者はんには太刀打ちできまへんな、ホンマ。

舞台設定は1968年から1977年頃。
ニューヨーク・ロケがふんだんに取入れられているのも魅力で
カナダのニューファンドランドや英国のロンドンも登場する。
たとえいっときでもニューヨークに身を置いたビジネスマンなら
このドラマを観て、なつかしさに身をよじること請け合い。
かく言うJ.C.など、最たる者だ。

メトロポリタン・オペラハウスに山崎と水沢アキが現れる。
演目はヴェルディの「リゴレット」。
おそらく彼の作品中、もっとも有名な曲、
「女心の唄」が画面から流れくる。

=つづく=