2019年7月3日水曜日

第2167話 白い粉にギクリ (その1)

この日は2ヶ月に1度の理髪日。
1週前の雨を避けて予約を順延したのだ。
ところが、この日の予報も雨模様。
先延ばした意味がないな。

東京メトロ南北線で目黒駅到着。
まだ13時前で店々は混んでいようが
早いとこランチを済ませにゃならない。
サロンの予約は14時だからネ。

小雨パラつく中、権之助坂を下っていった。
しっかし、この坂道にはラーメン屋が多いこと、多いこと。
数えたわけじゃないが、たかだか数十メートルのあいだに
軽く10軒はあるんじゃなかろうか―。
これで共存できるんだから大したものだ。
とゆうより、日本人ってこんなにラーメン好きだったっけ。

「とんかつ大宝」の店先に差し掛かった。
過去に1度しか利用していないが印象はよい。
店内の狭さに閉口したものの、
とんかつの美味しさを記憶している。
よしっ、久しぶりに食べとこう。

あれはいつだったかな?
帰宅後、チェックしてみたら2008年5月だった。
もう10年以上の月日が流れている。
店主も歳を重ねたことであろうヨ。

幸いにも行列はナシ。
女将らしき女性がすぐに案内してくれた。
8席のカウンターは相変わらず狭い。
養鶏場のケージに収まったブロイラーの気持ちがよく判る。
ああいうのは動物虐待の最たるものじゃあるまいか―。

壁のメニューを見上げてほくそえんだ。
この時間ならまだランチタイムサービスを受けられる。
サイズが小さくなるとんかつ屋のランチサービスは
”小食漢”にとってまさしく渡りに舟である。

ほぼ同時に入店した右隣りの若いリーマンが
特ロース定食を通した。
おい、おい、昼間っから特ロースかヨ。
ツラを拝みたいが真横なのでうかがえない。
前を向いたまま文字通り、目いっぱい蟹目にしてみたが
どうしても見えない。
まっ、いいや。

すると、何てこたあない。
「暑いな、脱いじゃおうか・・・」―
ヤッコさん、独りゴチて立ち上がるじゃないか。
後ろを通り抜けて入口方向に向かう際、
ヤツの右尻ポケットに差し込んだデカい財布が
J.C.の背中を目いっぱい引っ掻いていきやがった。
痛くはないけど不快なりぃ!

=つづく=