2019年7月29日月曜日

第2185話 わざわざ練馬で三球三振 (その1)

ひと月ほど前にトラットリアで
会食したばかりのメンバーからまたもやお声が掛かった。
4人でアワビ三昧に溺れようという企画だ。
実はJ.C.、アワビにそれほどの魅力を感じない。
刺身にしたって嫌いじゃないけど、好んでは食べない。

仕切り役の女ボスに不都合が生じ、
残された3人が練馬区・練馬に遠征することとなった。
店の名はそのまんま「あわび亭」である。
相当の人気店でわれわれに与えられた時間は
開店の17時から18時45分まで。
後客の来店が19時なんだネ。

例によって独り先乗りの0次会を催そう。
わざわざ遠くに出掛けて1軒で済ますのはもったいない。
池袋で乗り込んだのは西武園行きだったかな?
西武池袋線の準急電車。
練馬駅に着いたのは15時半前だった

この時間に飲ませる店は少ない。
駅周辺を物色し始めたらいきなりパラパラときた。
千川通り沿いにチェーンっぽい焼きとん屋を発見。
雨に降られちゃ選り好みなんかしちゃおれんと、即入店。
先客はカウンターに1人だけだ。
酎ハイだかレモンサワーだかを飲んでいる。

接客の女の子に瓶ビールの銘柄を訊ねると、
サッポロラガー、いわゆる赤星だった。
サッポロなら黒ラベルを好むが、
なぜかここ10年、赤星を扱う店舗が増えた。

温故知新の精神なのか、
本物感を打ち出しているつもりなのか、
ちょいと理解に苦しむけれど、これが現状である。
もしも赤星が黒ラベルより美味いのならば、
製造元のサッポロだって主力を赤星に戻すハズ。
メーカーは黒ラベルのほうに自信を持つのだ。

まっ、ゴチャゴチャ言わずに
大瓶を注文してさっそく1杯。
んぐっ、ぬっ、ぬっる~い!
おい、おい、ぜんぜん冷えが足りないヨ。
気の荒い客ならここで怒り出すところなれど
自称・紳士のJ.C.はぐっとこらえる。

「オネエさん、氷持って来てくれない? ビールぬるいや」
「エッ、エエ~ッ! あっ、はい、すみません」
焼き場で串を焼いているアンちゃんの顔色が変わった。
しばらくおいて女の子に注意しているようだが
叱っているふうではなく、こちらも一安心。

わが人生においてホンの数度目に過ぎない、
ビールのオン・ザ・ロックスを飲りながら
焼きとんの吟味に入った。

=つづく=