2019年7月9日火曜日

第2171話 流れ流れて多摩川線 (その2)

鵜の木をあとにして下丸子に到達。
沿線では比較的大きな町だ。
起点・終点にあたる多摩川・蒲田駅を除く、
5駅(沼部・鵜の木・下丸子・武蔵新田・矢口渡)のうち、
乗降客数が断トツで多いのは下丸子。
環八通りと多摩堤通りが近くを走り、
東急池上線・千鳥町が近接して交通の便がよいからだろう。

蒲田方面行きの改札脇に
とてつもなくレトロスペクティヴな食堂を発見。
つい先日、メトロ千代田線・綾瀬駅の高架下で
昔ながらの喫茶店に遭遇したばかりだが
この食堂はそれに匹敵、いや、以上かもしれない。

屋号は「喜楽亭」。
建物は戦前のものではなかろうか?
サンプルケースには各種洋食やオムライス、
中華の麺類などが並んでいる。
店頭のメニューボードはロースやヒレのかつ類が主力だ。

時刻は16時40分、夜の営業まで20分待ちである。
いやァ、入ってみたい。
だけどネ、13時過ぎにロースかつを食べてるから
とてもじゃないが食欲は湧かない。
食堂に飛び込んどいてビールだけというのもなァ。
はて、さて、どうしたものよのぉ。

このとき突如として降り出した雨。
それもランチ直後に見舞われたのと同じ篠突くヤツ。
権之助坂のコンビニで買ったビニール傘を
ヘアサロンに置いてこなくてよかったヨ。
それにしても今日は大気が不安定だねェ。
なあんて呑気なことなど言ってられない。
即、避難の巻である。

この一降りがにわか雨に過ぎないことを祈りつつ、
駅舎に逃げ込み、改札口で雨宿り。
幸いにも雨は15分ほどでやんだ。
「喜楽亭」のオープンは間近である。

でもネ、やっぱり入れんかった。
居酒屋ならちょこっとしたつまみでお茶を、
もとい、おチャケを濁せるけれど、
洋食屋ではハナっからムリ。

訊けば人の好い老夫婦が営んでいるらしい。
そんな翁と媼をガッカリさせるわけにはいかない。
淋しい想いなどさせたくないのだ。
これまで徘徊した成果として
面白そうな鮨屋・天ぷら屋・串揚げ屋を見つけておいた。
夏が過ぎて涼しくなったら、またこの町に帰ってこよう。
古き良き下丸子よ、それまでしばしサヨウナラ!

=つづく=