2019年7月24日水曜日

第2182話 小肌を超えた翻車魚 (その1)

この日は忙しいのなんのって・・・。
銀座でランチのあと、自宅に戻って歯を磨き、歯医者へ。
そのままJR山手線に乗り、上野駅・公園口改札を出た。
オペラの殿堂、東京文化会館の左脇を抜け、
上野のお山を下って不忍池のほとり、あじさい遊歩道を歩む。

つい先日もふれたがボート池に浮かんでいるのは
無粋なスワンばかりで手漕ぎは1漕としていない。
ここでふと心づいた。
いくら何でもこりゃ不自然だ。
ひょっとしたら安全上の理由か何かで
手漕ぎは廃止されたのかも?
事務所で確認してくりゃよかったな。

やって来たのは湯島天神下交差点そばの「シンスケ」。
東京を代表する酒場であるらしく、
誰が言ったか、西の「金田」に東の「シンスケ」。
もっともJ.C.はこのご意見に与しないがネ。

時刻は16時45分。
待合せたのみともFチャンはすでに並んでいた。
並ぶといっても先頭から2人目だ。
7~8人の行列は覚悟の上だからこれには少々拍子抜け。

16時55分。
先頭の御仁の相方が現れ、われらの後ろにも4人ほど。
これならカウンターに陣を取れること受け合い。
ほどなく暖簾が出て、亭主の正面に落ち着いた。

ハートランドの中瓶を2本発注。
ビールをそれほど好まぬ相方はグラスに2杯だけ。
あとはこちらの胃袋に収まること必定だ。
突き出しはこんにゃく入りのキンピラで、可も不可もなく。

最初に通したつまみは、生麩の田楽とにしん山椒漬け。
「シンスケ」のラインナップのうち、マイベストはこの生麩。
京都府庁前に本店を構える「麩嘉」のものだ。
京都を訪れた際にもっぱら利用するのは錦小路の錦店だがネ。

にしんの山椒漬けは戻した身欠きにしんを
お出汁に漬けて木の芽をあしらったもの。
名が体を表すとは言い難く、料理名に意義を唱える向きもあろう。
何となくオランダや北欧諸国のマリネをイメージしてしまう。

当店の清酒の取り揃えは秋田の両関のみ。
その本醸造辛口を冷酒でいただく。
ついでにシンスケ名物、きつねラクレットも。
油揚げにラクレット・チーズを忍ばせてあぶり焼いただけだが
ビールにも清酒にもよく合う。
Fチャンは狐につままれるでもなく、ご満悦の様子であった。

=つづく=