2019年7月16日火曜日

第2176話 アサヒを浴びて サッポロに酔う (その1)

しょっちゅう機会を持つわけではないが
この日は飲み仲間、S代サンのささやかな誕生会。
会場はJ.C.の発案で銀座の「ライオン 音楽ビヤプラザ」だ。
人気者の主役が会を一つにまとめると収拾がつかなくなるので
上手いこと小分けにし、誕生会を4回も催すのだそうだ。

例によって行き掛けの駄賃、
独り0次会を楽しむつもりでいたら
「私も一緒に連れてって!」―
もの好きが現れた。

落ち合ったのは東京駅丸の内南口のKITTE。
かつての中央郵便局である。
ここは思い出深い場所で初めて訪れたのは小学5年生のとき。
棲んでいた深川から家族4人はチンチン電車に乗り、
降りた終点が郵便局の真ん前。
入館して父親に買ってもらった切手が2枚あった。
歌川広重による東海道五十三次の「蒲原」と
第何回だったか、アジア大会開催の記念切手。
数年後、切手収集に興味を失って売りさばいた際、
一番の高値をつけたのが「蒲原」だった。

月日は流れ、高校2年の夏休み。
中央郵便局の正面、東京駅にある、
東京ステーションホテル内コーヒーショップでのアルバイト。
初めてのウェイター経験は実に楽しかった。
休憩時間になると、郵便局の大時計を見上げながら一服。
ポケットには自由に使える小遣いがたんまり。
余裕のハイスクール・ライフを送っていたものだ。

数年前に新装なった、その名もKITTEの1階に
アサヒビールが出店したのが
「 BEER&SPICE SUPER“DRY” KITTE 丸の内店」。
名の示す通り、ビヤバーである。

長ったらしいだけでセンスのかけらもないネーミング。
アサヒはこういうことに関して下手、キリンはもっと下手。
ビールのCMを見てるとよく判る。
その点、サントリーは上手だ。
永吉&結子のプレモルは感心しないが
ウイスキーはお手のもの、昔から伝統的にすばらしい。

発注したのは当方、エクストラ・コールド。
相方、隅田川ブルーイング クラフトビール3点セット。
セットの陣容は、ケルシュ(ケルン)スタイル、
吾妻橋ペールエール、そしてビタースタウトである。
気に入りのペールエールを掲げ、にっこり笑う相方と乾杯。
女だてらにこのタイプを好む御仁はきわめて珍しい。
まっ、人それぞれでいいんじゃないかい。

=つづく=