2019年7月8日月曜日

第2170話 流れ流れて多摩川線 (その1)

降りしきる雨の中、目黒駅に舞い戻り、
東急目黒線で1駅、不動前のヘアサロンへ。
担当のK子チャンに
「予約リスケの意味なかったネ」―ささやくと、
「でも先週は一日中降ってたけど、
 今日はホラ、明るくなってきましたヨ」―との応え。
ホントだ。

彼女にカットを委ねながら
今後の身の振り方に思いを馳せていた。
いつものように所要時間は45分。
弱い陽射しの下を再び駅へ。

目黒線で向かったのは多摩川駅。
今日は多摩川線沿線をテクテクと踏破するつもり。
途中、飲みたくなったら飲むし、食べたくなったら食べる。
まっ、歩けばすぐに飲みたくなるけど、
昼めしにロースかつ定食をやっつけたあとだから
易々と腹は減らないだろうな。

多摩川駅から隣りの沼部駅へと歩き始めた。
沼部は商店街すら見当たらない静かな住宅街。
それもそのはず、駅舎東側の地番は田園調布本町。
西は田園調布南である。
福山雅治の歌のモデルとなった桜坂は
駅から北東に歩いて2分の距離。
桜の季節でもないから町を素通りした。

鵜の木駅への道すがら、細い水路に遭遇。
かつて六郷用水が流れた名残りで
今は自然湧水が活用されている。
六郷用水の水源は多摩郡和泉村の多摩川。
「岸辺のアルバム」の舞台となった現在の狛江市だ。

鵜の木は小さいながらも商店街が線路と直角に交わり、
沼部より活気があった。
ちょっと駅を離れれば、町工場や木造住宅が残存しており、
典型的な大田区のリトルタウンといえる。
土地の名の由来は古くから鵜(カワウかウミウか不明)が
多く棲みつく”鵜の森”があったことから—。
だけどサ、水鳥の鵜が森に棲むのかネ?

駅前のマルエツで一休みならぬ、一涼み。
冷蔵棚の缶ビールに手が伸びかかったが
すんでのところで思いとどまった。
せっかく馴染みの薄い町を散策しているのに
缶ビールはないやろ。
ここは我慢、ガマンで、もう一歩きとまいりましょう。

=つづく=