2019年7月22日月曜日

第2180話 お茶は飲まない喫茶店 (その2)

 喫茶店「蘭蝶」にて
生ビールと日替わりランチをいただいたあと、
その足でくだんのレトロ喫茶に向かった。
千代田線&常磐線の綾瀬駅高架に面しているのに
やはりこの店の地番は東京拘置所のある葛飾区・小菅で
足立区・綾瀬ではなかった。

店名は「TOPS」。
「蘭蝶」に比べると、レトロ度はずいぶん後退する。
入ってみたら意外に明るくて古さを感じさせない。
ちょいとばかり拍子抜けの心持ちである。

見知らぬヨソ者の侵入に
店主と思しきオジさんはビックリした様子。
胡乱な目つきが、いったいコイツは何者?
そう、ささやいているのがひしひしと伝わってくる。
けっして怪しいモンじゃありやせん。
こちらも目で訴えたつもりながら効果はなかった。

この店もオジさん独りの接客だ。
足元が不自由な様子で歩行に時間がかかる。
そこそこの広さがあるから難儀なことだろう。
オジさんの母親だろうか、
ときどき奥から老女の声が聞こえるものの、姿は見えない。

おそるおそるビールのアル・ナシを訊ねる。
応えはイエスでスーパードライのレギュラー缶が500円。
家の外では瓶が望ましいけれど、
瓶でも缶でも味は一緒、もちろん所望に及ぶ。

半月前に懸念したのは当店におけるフード・メニュー。
数年前までオムライスなども出していたようだが
現在はトーストのみで
バター・ジャム・ハム・チーズ・ハム&チーズの5種類。

差し向かいではなくとも
この空間に2人だけは居心地がよろしくない。
ケツの座りが悪いのだ。
BGMがあるでもなく、静けさだけが降り積もる。

どういうわけだろう?
店の真ん中に電話ボックスが設置されている。
わざわざ見に行ってみれば、
中には電話が1台に、なぜかノートパシコンが2台。
理由をを訊く気にもなれず、ボーッとビールを飲んでいた。

そこへ五十がらみの男性客が来店。
救いの神の登場に、やれやれと立ち上がり、
オジさんに500円玉を手渡して退店。
今日もまた懐旧の心につまづいて2軒ハシゴしたものの、
やっぱりJ.C.に喫茶店は向かないや。

「TOPS」
 東京都葛飾区小菅4-11-7
 03-3601-1553