2019年7月15日月曜日

第2175話 流れ流れて多摩川線 (その6)

祝 王座奪回 村田諒太どの

今年のスポーツで一番うれしかったのはこの快挙なり。

それはさておき、東急多摩川線・矢口渡駅前の「甚六鮨」。
切盛りするのは追い回しのアンちゃんを加えた男性3人に
女将さんと娘さんの女性が2人で計5人。
どうやら三世代に渡る家族経営のようだ。
それにしてもみんながみんな容姿に優れ、
銀座の高級鮨店顔負けである。
この一点が店の品格の向上に大きく寄与している。

酢の物を持て余したのでにぎりに切り替えた。
いつものように白身で始めて、まず平目。
時季が時季だからこんなものだろう。
水準には達していた。

続いて光りモノ。
生の光りは苦手につき、酢〆の種を訊ねたら
小肌・あじ・さばとのお応え。
小肌は酢の物にあったため、あじ&さばを—。
平均値より深めの〆具合ながら
いかんせん、酢の物のあと、淡く感じてしまった。
返すがえすも粉わさびが残念なり。

まだ早いが、そろそろ締めにかかろう。
当然、ラストは煮モノで、王者の穴子から。
シモ(下半身)を煮ツメでやると、まずまず。
ツメにはいま少しパワーがほしい。
村田諒太ほどのパンチ力を要らないがネ。

蝦蛄(しゃこ)があると聞き、即お願い。
これもツメで所望すると、
うわっ、カワユいなァ・・・J.C.の小指ほどもないヨ。
香港名物のオバケ蝦蛄みたいなのは望まぬが
それにしても小っちゃい。
そのわりに食味はよく、直ちにアンコールしたくらいだ。

訊けば、愛知の産だという。
愛知なら知多半島の先端、南知多市の豊浜に違いあるまい。
東に三河湾、西に伊勢湾、
豊穣の海にはさまれて、蝦蛄の水揚げ量も半端ではない。
かつての東京湾における小柴港に似た役割を担う豊浜港。
壊滅状態にある小柴の蝦蛄はいつ戻って来るのだろう。

蒲田まで1駅歩き、とうとう多摩川線を完全踏破。
京浜東北線に揺られ、気持ちよく舟を漕ぎながら帰途に着く。
夜食は「三河屋製パン所」のハムカツパン。
厚いコロモに薄いハム、これがノスタルジックでいいのよねェ。

翌朝食べた三色パンの三色は、こし餡、カスタードクリーム、
そしてなぜか、りんごジャムだった。
小学生の頃に棲んだ大田区・大森では
このパンを三つ島と呼んでいたが、りんごジャムは初めてだ。
普段、甘いパンなどまず買わないのに
懐旧の心につまづいた結果がこれでありました。

=おしまい=

「甚六鮨」
 東京都大田区多摩川1-6-19
 03-3758-0226

「三河屋製パン所」
 東京都大田区矢口1-6-1
 03-3759-7468