2011年4月6日水曜日

第25話 ため息の老舗鮨 (その2)

はとバスもやってくる「駒形どぜう」のすぐそば、
「鮨 松波」に来ている。
つけ台の右端がテーブル仕様に設えられている。
今をときめく銀座の「鮨 水谷」が「よこはま 次郎」時代に
まさしくこのスタイルであった。
4~5人連れでつけ台に落ち着きたいが
話が遠くなると悩む向き用に考案されたのだ。
接待客を取り込む腹案もあろう。

男ばかりが4人、そのテーブル仕様に陣取った。
コの字形だから上辺と底辺は互いに差し向かい、
きわめて珍しい陣形である。
ビールはアサヒとキリンの小瓶のみ。
差しつ差されつに小瓶は七面倒くさい。
話はそれるが最近のビール不足はどうしたことだ。
近所のスーパーではレギュラー缶やロング缶が
すべて売り切れ、ヨーグルトや納豆よりも入手が難しい。
他所ではそうでもないみたいだけれど・・・。

乾杯と同時につまみ類がどんどん供される。
接客の女将が気の利かないことはなはだしく、
素っ気もなければ、色気など求めるべくもない。
追加のビールの銘柄は取り違えるし、
刺身が出たのに醤油の小皿を忘れている。
単なる運び屋、いわゆるパシリと化しており、
これならファミレスのサービスほうがずっと真っ当だ。

ぶり刺しは大根おろしで、〆さばは酢味噌で、
このスタイルは昔からずっと変わらない。
これがベストと、親方信じて疑わないからだが
願わくば、わさび醤油もいただきたい。
梅かつおと焼き海苔のセットも定番ながら
正直言ってあんまりうれしくない。
和朝食ならありがたいんだが・・・。

目を疑い、続いて天を仰いだのは無粋なぶり大根。
これには大きなため息がもれた。

♪  ため息の出るような 貴方の仕打ちに
   苦い思いを噛みしめる オトコ心よ~ ♪

なのである。

一人アタマ2万円超えの高級鮨屋で
居酒屋アイテムはあまりと言えばあまりの仕打ち。
アラ煮に目のない人なら歓ぼうが
粋な土地柄の江戸前鮨屋には
それなりの品性が求められてしかるべきなのだ。
旨けりゃよいというものでは断じてない。

つまみの平目・中とろはそこそこ。
蒸しあわびとそのスープ、甘酢に浸した子持ち蝦蛄、
思い入れの強い品々にも敬意を表したい。
でも、ぶり大根がなァ(まだ言ってるよ)。

にぎりは3枚付けの新子(この時期で!)に始まり、
すみいか・赤貝・さより・海胆・穴子・玉子。
いずれも種・酢めしともにかなり大きい。
鯵などあまりにデカ過ぎて、とてもかぶりつく気になれず、
隣りの後輩に無償で譲渡した。
つい数年前までは輝きを放っていた老舗も
とうとう黄昏のビギンを迎えたようだ。
時の流れの酷さに言葉が見つからない。

「鮨 松波」
東京都台東区駒形1-9-5
03-3841-4317