2011年4月20日水曜日

第35話 オムレツが鬼門

オムレツが鬼門である。
いえ、食べるのが苦手というんじゃなくて
作るのが下手なんざんす。
どうにもこうにも上手に焼き上がらない。
火力の調節がまずいのか、
フライパンと菜箸の使い方がいけないのか、
おそらくはその両方であろう。
いやはや、イヤになっちゃう。

とは言え、味のほうは上々だし、
姿カタチだってそんなに悪くはない。
ただ、プロの料理人みたいに
光り輝くのがどうしても焼けない。
美しい流線形を描き、焼け焦げなんかないヤツ、
表面はしっかりしていながら中はトロトロで
フォークの背で突ついてやると、
プルプル震える、そんなのが理想的だ。

ホテルの朝食ビュッフェで
プロが目の前で焼く実演を
食い入るように見つめたことも何度かあった。
技術を盗もうとしたのだが結局は薬局、
ハハハ、無駄でした。

いつぞやは玉子を大量に買い込み、
腕まくりして特訓に励んだことさえある。
特訓といってもコーチは付かないからまったくの自己流。
しかし、この試みも不発に終わった。

ガスの火と上手く折合いをつけ、
フライパンを持つ左手首を右手でトントントン、
焼き上がった玉子をくるり反転させ、皿で受ける。
言うは易く行うは難し、とかくこの世はままならぬ。

自分で言うのもなんだがこう見えても
ステーキを焼かせたらかなりの腕前。
外でめったにステーキを食べないのは
シツッコい霜降肉が嫌いなのと、自作のほうが旨いから。
それがオムレツはからっきし駄目、牛肉と玉子じゃえらい違いだ。

ところが先日、とうとうやりました。
カタチの整った器量ヨシをやっとのことで完成させやした。
とくとご覧くだされ。

美しい完成品に絹さやを添えて

どうです? プロはだしでござんしょう?

エッ、やけに白っぽいじゃないか! ってか?
テヘッ、やっぱ判りますぅ?
さすが当ブログの読者はお目が高い。

中からトロリと黄身が流れ出た

お察しの通りコイツはオムレツじゃなくて
フライドエッグ、いわゆる目玉焼きなんでサ。
しかも偶然の産物ときたもんだ。

でも、負け惜しみで言うんじゃないが
こんな目玉焼きはプロだってそう簡単にゃ焼けませんぜ。
本人がもう2度と作れないんだもの。