2011年4月13日水曜日

第30話 著名人の大好物

春の到来を感じる暖かな夕暮れ。
ほどよく冷えたビールを飲みながら
何気なしに目の前の書棚に目をやった。
先の大地震の際、CD、DVD、ビデオカセットは
みんな棚から飛び出したのに
書籍類は1冊として落下しなかった。
紙を綴じた本は健気にも互いの揺れを吸収し合ったのだろう。
今も肩を寄せ合って並んでいる彼らがいじらしい。

20年近くも以前、
マンハッタンの「紀伊国屋」で買った本に目がとまった。
週刊文春編による「私の大好物」なる文庫本だ。
各界の有名人が好物の食べものを紹介している。
すでに鬼籍に入った方々も含めて
ちょっとお目に掛けてみましょうか。

 藤田まこと   しょうが天 大寅(大阪・豊中)
 笑福亭鶴瓶  とろたく 大天寿司(兵庫・西宮)
 永六輔     ごぼ天うろん かろのうろん(福岡・博多)
 加藤芳郎    紅しょうが 島屋商店(東京・沼袋)
 赤塚不二夫  パエジャ カサ・ベリヤ(東京・新宿)
 竹下景子    釜揚げしらす 浜野水産(神奈川・藤沢)
 都はるみ    ソース焼きそば 山茶花(東京・四谷)
 江夏豊     たいやき 浪花家(東京・麻布十番)
 松岡修造    牛丼 吉野家(東京・吉祥寺)

みなさん意外と庶民的な食べものがお好きなようで・・・。
ちょいと値の張りそうなのは
まぐろのトロとたくあんを合わせた、とろたくなるにぎり鮨。
それにスペイン料理のパエジャ(パエリャ)くらいのもの。
松岡修造選手(今はキャスターか)の牛丼ってのはいいな。
大東宝の御曹司が「吉野家」だもの。
しかも高校生なので金があまりなく、
2杯目は白めしに丼つゆだけ掛けてもらって
かっ込んでいたとのこと、笑えますなァ。

中にはJ.C.が好きなものも何品かあった。
2つほど紹介しますね。
まず、有楽町ガード下、「天米」の天丼
これは東海林さだおサンの大好物だ。
甘辛いタレのしみ込んだごはんがお好きだそうで
熱いと味が判らないからほどよく冷ますのが肝心とのこと。
それを道路工事のように垂直に食べ進むんですと・・・。

「天米」には何度も行っているがいつも昼。
なぜか天丼しか食べたことがない。
他店と違い、コロモにサクサク感はなく、
なんかプヨプヨしている。
子どもの頃、惣菜屋で買ってきた天ぷらで
母親が作ってくれた天丼にやたら似ているのだ。

もう1つは中央線・小淵沢駅の駅弁、「丸政」の元気甲斐
これが好きなのは作家の宮脇俊夫サン
二段重ねの木箱入りには本物の朴葉や隈笹があしらわれ、
東京駅で売られているチャラチャラしたのとは
比べるべくもない古武士のようなたたずまいを見せている。
食味もなかなかに味わい深い。

10年前に食べたときの品書きが本に貼り付けてあった。
一の重には8品目、二の重には6品目。
栗としめじのおこわ、胡桃御飯が主食で
鶏の柚子味噌和えが主菜だ。
山女の甲州煮というのがいかにも甲斐の国らしかった。
これはヤマオンナを煮付けたんではなくて
川魚の山女魚(ヤマメ)のことですぞ。