2011年4月18日月曜日

第33話 鮨は東京にあり (その2)

六本木の東京ミッドタウンにほど近い鮨店に来ている。
「兼定」は灯りの乏しい裏道に目立たぬようにあり、
その先には昔たびたび訪れた「ミスター・スタンプス」が
今もなお頼もしく営業を続けている。
金融界に足を踏み入れた30年前、
同僚のイギリス人たちと酒を酌み交わした店だ。
外銀で働く外人ディーラーの接待にもよく利用したっけ・・・。

さて、こよなく愛する「兼定」である。
初訪問は2002年の2月のことで実に衝撃的だった。
ビールのあとは青森の酒、桃川の冷酒をほどよく飲んだ。
当日のいただきもので花マル印は下記の通り。

 つまみ・・・温製真鱈白子ポン酢 めひかり一夜干し
 さしみ・・・平目 平貝(たいらぎ)
 にぎり・・・酢あじ 春子w/白板昆布 小肌 蒸しあわび
       赤貝&そのヒモ まぐろ赤身 まぐろ中とろ

にぎりにのほとんどが花マルで
その日の食日記にはこうある。

 初っぱなの酢あじに驚き、小肌には圧倒された。
 鳥肌が立ってしまい、生涯ベストかもしれない。
 蒸しの軽いあわびには感極まってまたもや鳥肌。
 こちらはまぎれもなく生涯ベストのあわびであった。

少々大げさなようだが、それほどに感動したのだ。

あれから丸9年。
今回は飲み友だちのN戸夫妻と訪れた。
ワイン好きの彼らのために
持込むワインの調達はJ.C.の役目となる。

白・・・フィクサン ドミニク・ローラン ’03年
赤・・・バローロ セッラ ’03年
    シャトー・コロンビエ・モンプルー ’83年

「兼定」の親方も無類のワイン愛好家。
それぞれ1杯ずつ献上することで持込み料が免除される。
よきシステムというほかはない。

いただいたものはかくの如し。
赤字特筆モノである。

つまみ・・・うるい白和え めひかり一夜干し 真鯛中骨塩焼き
           蒸しあわび 子持ちやりいか煮
さしみ・・・平目 真鯛 かつお あおりいか すみいか
にぎり・・・まぐろ赤身 まぐろ中とろ 青柳 あじ押しずし
      さば押しずし 小肌 穴子

平目と真鯛はかつて蝦蛄の名産地だった小柴の港に揚がったもの。
かつおは三陸方面に上る前に紀州沖で釣上げられたものだ。

ずいぶん以前のことながら
下北沢の「鮨 福元」がまだ「すし処 澤」を名乗っていた時分、
たまたまハナシが「兼定」に及び、親方が感慨深げにつぶやいた。
「あの店のよさはフツーのお客には判らんでしょ、
 いや、鮨屋にだって判らんかもしれんなァ」―
そんな鮨屋が六本木「兼定」なのである。

「兼定」
 東京都港区六本木4-4-6
 03-3403-3648