2011年4月25日月曜日

第38話 トウモロコシにグラシャス 古く良かりしニューヨーク Vol.1

まずは前回第37話にて中国の東北地方(旧満洲)では
ニンニクの入っていない餃子を
生ニンニクをかじりながら食べるってホントかな? と書いたら
西宮在住のM原サンから「その通り!」との検証をいただいた。
M原サン、お世話様でした。

さて、1990年代のニュヨーク赴任時代、
「J.C.オカザワのれすとらんしったかぶり」というコラムを
「読売アメリカ金曜版」に5年ほど連載した。
その中からいくつか選び、
”古く良かりしニューヨーク”シリーズとして紹介したい。
今日はその第1回であります。

=トウモロコシにグラシャス=

子どもの頃になれ親しんだ味に
執着心が強いのは猫と人間だそうである。
人にはつかない猫が家とエサにはつくという、どなたかの仰せ
人間など自分を育ててくれた食物、
とりわけ主食に対する愛着は生涯捨て去ることができない。
日本人ならもちろん米の飯、欧米人ならさしずめパンだろう。

15世紀における世界の主食作物分布図に出会った。
東南アジア、朝鮮半島、日本列島は米。
中欧から地中海沿岸、トルコを経てペルシャ、
インド北部、中国の東北地方まで帯状に小麦。
北米東海岸とメキシコから南米北端まではトウモロコシ。
当時の世界三大農作物があざやかに色分けされていた。

北中米のトウモロコシは移民の持込んだ小麦に駆逐され、
今はメキシコと中米がかろうじてその食文化を守るのみ。
彼らの祖先はわれわれと同じモンゴロイドで
サケ・マスを追い、ベーリング海峡を渡った人々が
メキシコを安住の地としたのは
そこに神の恵み、トウモロコシを発見したからだ。
メキシコ料理といえば、いの一番にトルティーヤ。
トウモロコシの粉を練り、薄くのばして焼き上げる。
タコスもエンチラーダもみなトルティーヤの応用版である。

「Rosa Mexicano」の名物は客の前で仕上げるグアカモーレ。
作り置くと水っぽくなるからで、ほとんどの客がそれで始める。
アボカドが苦手でなければ万人が楽しめる料理だ。
アランブレス・デ・カマロネス(エビの串焼き)は
エビの鮮度が高く、火の通しも巧み。
極辛のチリ・セラノの刺激が快いうえに
添えるライスの炊き加減も完璧だ。
文句なしにイチ推しです。

「Mi Cocina」のカラマーリサラダはイカが生っぽくていい。
酸味が利いており、メニューにはスパイシーとあったが
”酸っぱいシー”のほうが的を射ている。
ソパ・デ・ロッテはいわゆるコーンスープ、
クノールしか知らない向きには必注となる。
ビーフ・ファヒータに使われている牛肉の部位はハラミ。
外側のトルティーヤと一緒に噛みしめる食感が抜の群だ。

料理の合いの手にはビールがピッタリ。
ボヘミア、カルタ・ブランカはともにさわやかな銘柄。
口当たりのよいマルガリータを飲みすぎるとあとで腰にくる。
殊に女性はご用心、テキーラを甘く見ちゃあいけませんて。

ということで、帰らざる懐かしの日々でした。

「Rosa Mexicano」
 1063 1st Ave. NYC
 212-753-7407

「Mi Cocina」
 57 Jane St. NYC
 212-627-8273